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“新しい働き方”にも限界が? ワーケーション拡大のカギ 「+α」のサービスで地方創生へ

2023年1月2日 16:00
“新しい働き方”にも限界が? ワーケーション拡大のカギ 「+α」のサービスで地方創生へ
北海道・厚沢部町での「保育園留学」

コロナ禍で、テレワークが企業に定着。さらに“ワーケーション”人口も拡大しています。しかし、意外な理由で、ワーケーションができない人たちも。そうした人たちに向けた、新しいビジネスが広がっています。

■会社はOKでも「私はできない」…ワーケーションにハードルも

普段のオフィスとは離れた場所で休暇を楽しみながら働く「ワーケーション」。ワーク(仕事)+バケーション(休暇)から生まれた造語です。

コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入し、ワーケーションを容認する企業も広がっています。しかし、会社がワーケーションを認めていても、家庭の問題や個人的な理由などで、ワーケーションができない人たちもいます。

■課題1:子どもの保育園は…「+保育園」で子どもと一緒に

例えば、幼い子どもがいる家庭。滞在先で親が仕事をしている間、子どもを預ける場所がないと、両親のどちらかが子どもをみることになります。そういった人たちに向けて提供されているワーケーションプログラムが「保育園留学」です。(※「保育園留学」はキッチハイクの商標)

およそ2週間の滞在期間中、子どもを現地の認可保育園や認定子ども園に通わせ、親はコワーキングスペースなどで働きます。現在は北海道、岐阜、新潟、熊本でサービスが提供されているほか、山梨県内の4か所でプレオープンしています。

実際に「保育園留学」を体験した東京在住の家族に話を聞くと、広々とした園庭で遊び疲れたのか、保育園留学中は普段より1時間も早く就寝したのだといいます。

留学中、この家族が生活したのは地域の「移住体験住宅」。家電や家具などといった最低限の生活備品はあるものの、ホテルや旅館に滞在するのとは違い、至れり尽くせりのサービスは付いていません。ただその分「現地で暮らしているような感覚になった」といいます。

■親子ワーケーションをかなえる「保育園留学」 その課題とは

一方で課題は、受け入れ体制の整備です。宿泊施設や保育園のキャパシティーの問題から、ひとつの拠点で一日に受け入れられるグループは、わずか数組。そのため、現在はほぼ予約で埋まり、新規の予約が取れない状態が続いています。

また、費用面でのハードルから参加を躊躇する声も上がっています。大人2人、子ども1人で2週間参加した場合、必要な費用は、宿泊費・保育料などを合わせておよそ20~30万円。さらに場所によっては、滞在日数分のレンタカー代なども必要になるため、「思っていた以上に費用がかさむ」といいます。

■ワーケーションの受け入れが地方創生へ

ワーケーションを受け入れる側の地域には、大きなメリットがあるといいます。「保育園留学」の受け入れ先のひとつ、北海道・厚沢部町。じゃがいもやアスパラガスが名産の自然豊かな土地です。しかし、急速に過疎化が進み、現在の人口は20年前と比べて3割減の約3500人。「保育園留学」が始まったことで、定期的に子連れ家族が訪れるようになり、地域が活性化。留学を終えた後に再訪問や移住をした人もいるそうです。

■“ワーケーション関係人口”の増加を目指す自治体 民間企業とタッグ

ワーケーションが過疎地域にもたらすメリットに、全国の自治体も注目しています。

山梨県は、山間部などの過疎化が進んでいる地域をワーケーションなどで利用してもらおうと、「二拠点居住推進課」を立ち上げ、さまざまな施策を打ち出しています。

その一環として「別荘サブスクリプション」を提供しているSANU(サヌ)と、「二拠点居住推進に関する協定」を結びました。協定を結んだ理由は2つあります。

ひとつは、2拠点居住をしている人の実態を掴むため。ワーケーションなどの2拠点居住は、行政の手続きが必要なく気軽に始められる分、どれくらいの人が2拠点居住をしているのか把握するのが難しいのだといいます。そこで、2拠点居住の利用実態や需要を知るために、ワーケーション関連サービスを提供する民間企業が持っているデータなどを活用したい考えです。

■課題2:都会のサービスを地方にも 「+カーシェア」

もうひとつの理由は、地方での新たなビジネスモデルを実証するため。SANUは先月から会員向けにカーシェアサービスを始めました。車を持たない利用者から、「現地での交通手段が不安」という声があったからです。

一般的にカーシェアの利用者は、立地的に駐車場を持てなかったり、平日は電車通勤で車を利用しなかったりするような都市部の人たちです。

二拠点居住推進課の担当者は、「カーシェアが都市部以外でもビジネスモデルとして成り立つことが実証されれば、他の地域にも誘致することを検討したい」としています。地域に新たなビジネスを生み、経済の活性化を図ります。

■ワーケーション「+α」で広がるか

企業がワーケーションを導入しない理由のなかには、「ワーケーションできる従業員が限定的で、社内で不公平感が生じるから」という声もあります。保育園やカーシェアなどといった、ワーケーション「+α」のサービスで、ワーケーションは広がるのでしょうか。