【なるほど】急速な円安進行…「指し値オペ」発表で起こったコト、日本と欧米の金融政策が対照的なワケは?
日銀が28日、長期金利の上昇を抑えるため、午前と午後、「指し値オペ」を実施すると発表しました。大規模な金融緩和策を継続するという方針通り、実行に移した形ですが、外国為替市場では急速に円安が進みました。
背景には何があるのでしょうか?
◆日銀が「指し値オペ」実施を発表…28日の動きは
日銀は28日、指定した利回り「0.25%」で国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施すると発表しました。
債券市場では、アメリカの利上げのペースが速まるとの見方から日本国債を売る動きが強まり、長期金利は日銀が許容している上限の0.25%まで近づいていました。こうした状況を受け、日銀は長期金利の上昇を抑えるため、指し値オペの実施を午前と午後、発表しました。
発表直後、外国為替市場では、日米の金利差が広がるとの見方から急速にドル高円安が進み、円相場は一気に値下がりしました。午後6時前、およそ6年7か月ぶりに1ドル=125円台をつけました。
このわずか3週間ほどで10円ほど円安が進行したことになります。
◆急速に円安ドル高が進んだ背景は
今年1月には1ドル=113円台だった円。ここまで急速に円安ドル高が進んだ背景には何があるのでしょうか。
日銀は2%の物価安定目標のため、長期金利の指標となる10年物国債の利回りを「ゼロ%程度」に誘導する金融緩和策を続けています。日銀は、大規模な金融緩和策を継続するという方針通り、実行に移した形ですが、対照的にアメリカなどの中央銀行では利上げに踏み切るなど金融引き締めの動きが広がっています。
◆日本と欧米の金融政策が対照的な理由は、物価上昇の「質」の違い
日本と欧米の金融政策が対照的な理由は、どこにあるのでしょう?
それは、物価上昇の「質」の違いです。
欧米では新型コロナウイルスからの経済活動の回復のペースが速く、個人消費も力強いことから、物価が急上昇しています。各国の中央銀行は、インフレを抑制するために利上げに踏み切るなどの金融の引き締めに方向転換しました。
しかし、日本の物価上昇率は上昇傾向であるものの、欧米と比べると歴然の差で、日銀が目標とする2%の物価安定には達していません。しかも物価の上昇は賃金にも個人消費にも十分に反映されておらず、現在の金融緩和策を続けざるを得ない状況です。
今後、アメリカとの金利の差がさらに広がることで、外国為替市場では円安が進む可能性があります。
先行き不透明なウクライナ情勢により、世界的に資源価格が高騰している上、エネルギーや小麦などの穀物など多くの原材料を輸入に頼る日本にとっては、この輸入物価の上昇などでいわゆる“悪い物価上昇”の懸念も指摘されています。
日銀がどのタイミングで政策の方針を転換し金利の引き上げの議論を始めるのか、難しい舵取りが迫られています。