“いない”45.1%…女性の管理職登用どう進める?選択的夫婦別姓は?女性リーダーたちの本音
■女性管理職「いない」企業が“約半数” 2030年までに30%を掲げるも…
経済部 企業・財界担当 城間将太記者
「経済同友会の夏のセミナーを取材してきました。企業トップやトップを経験したことがある人たちの集まりで、54人が参加していたんですけれども、そのうち女性は9人でした。経済同友会って経済界の集まりの中でも比較的ダイバーシティを意識しているところでもあるんですが、それでも6分の1程度なんです」
「政府は2030年までに女性管理職比率30%を目指すという方針を立てていますが、実際あんまり進んでいないなって周りを見ても思います」
庭野解説委員
「増えてはいるけれども…ですよね。帝国データバンクの調査によると、去年夏に民間企業約1万1000社から得たアンケートの結果で、『女性管理職が30%以上』という企業が9.8%と1割に満たず、『女性管理職はいない』という企業が45.1%でした」
城間記者
「これだけ女性管理職を増やそうというムーブメントがある中で、0が約半数というのはちょっと驚きですね」
■女性の管理職登用どう進める?数少ない女性リーダーたちにきいた
城間記者
「今回、経済同友会のセミナーに参加した企業の女性リーダー2人に、女性役員とか管理職を増やすために会社でどんな工夫をしているか聞いてきました」
「まず、大和証券グループ本社の田代桂子副社長。大和証券グループでは今年、会社の役員である取締役の女性比率が50%になったということなんです。これを達成できたからといって満足するんじゃなくて、この先どうしていくかが大事だとして、次のような工夫を話していました」
田代桂子副社長
「これをもって当社はある意味、男性でも女性でも最低30%ということだと思います」
「よくティッピングポイントということを言うと思うんですけど、30%くらいいると会議の場で発言しやすくなって、それが10%だとなかなか言いづらいというのがいろんな数字で表れています」
「男性が30%、女性が70%の可能性もあるし、女性が30%、男性が70%の可能性もあると思うということで、一番多様性を意識した適任な方を、社外取締役を含めて取締役会全体を多様性のあるものにしたいというのが経営の意図だと認識しています」
城間記者
「大和証券グループ本社では、今回、取締役の人数は50%となったものの、事業会社である大和証券については、部長とか副部長とか、管理職の女性は21.1%と、30%に満たないということなんです」
「続いて、不動産やホテル経営などを行う森トラストの伊達美和子社長から話を聞いてきました。森トラストでは、女性管理職を増やすためにこういう取り組みをしているそうです」
伊達美和子社長
「工夫という点では、女性自身が管理職を目指すキャリアプランを早い段階から意識してもらいたいと思っています」
「チャンスは女性だけでないので、女性のみに与えるのではなく若手全体に対して自分自身のキャリアビジョンを早い段階で考えるしくみを意図して作っています。 よって早いタイミングから、具体的実務で活躍できるようなしくみ、チャンスを与えることを意識しています」
城間記者
「多くの企業では現在、男性の育休取得も広がっているとは思うのですが、やはり女性の方が産休や育休で会社を休む期間というのは長いと思うんですね。伊達社長の実感では、その時期がちょうどキャリア形成をしていく時期と重なりやすい。なので、森トラストでは女性に若いうちからチームリーダーなどを任せる機会をつくっているそうです」
庭野解説委員
「子育てとの両立の面だけでなくて、若いうちからやりたいことをやれるということは今すごく必要だと思います。昭和の時代は20代、30代は“雑巾がけ”といって、やりたくない仕事でも先輩の下働きをやり、40代ぐらいになってやっと自分のやりたかったことが実現できるようになるんですけれども、今はもっと時代が早く進んでいますから」
■通称使用と選択的夫婦別姓は「全く違うもの」──企業が法制化をもとめるわけ
庭野解説委員
「選択的夫婦別姓についても女性リーダーの反応を聞いてきてくれましたけど、いかがでしょうか」
城間記者
「先月、経団連が選択的夫婦別姓制度を導入するように、自民党や各大臣に提言を出しています。現在、多くの企業では旧姓の通称使用を認めているんですけれども、経団連が役員などを務めている女性に行ったアンケートでは、88%の女性が旧姓を通称として使用することで『不都合、不利益、不便が生じている』と回答していて、多くの女性が困難を感じているんだと思いました」
庭野解説委員
「これからオリンピックもありますけれども、アスリートや研究者の方などは、名前が変わってしまうと検索したときに違う人のように見えるので、過去の業績がなかったことになってしまう不都合もあるというふうに聞いています」
城間記者
「職場で旧姓使用を認めている企業のトップは、選択的夫婦別姓についてどういうことを考えているのかというのを聞いてみました。まず、大和証券グループ本社の田代副社長です」
田代桂子副社長
「通称での姓の使い方と選択的夫婦別姓というのは全然違うものだと思います」
「通称を使っていることによって姓を2つ持つことになりまして、海外に行った場合、それが非常に不都合になるということが、今回やはり選択的夫婦別姓を導入するべきだという根幹にあるものだと思います」
「選択しなければ何も変わらないですし、選択することができることによって、例えば働くにあたって大きなメリットがありますし、そもそも姓を2つ持たないで生活できるということが、今“選ばされている”方々にとっては大きな心理的ストレスになっているのが解消できるというのが大きなポイントだと思います」
庭野解説委員
「海外で普通に仕事をしている中で、パスポートと名前が違うって結構大きいんですよ。なので経済界からは、“夫婦は姓が同じであるべきかどうか”とか、そういう精神論ではなくて、実務的に困る、不便が生じているという声が上がっているんだと思うんですよね」
城間記者
「パスポートの話もそうですし、税とか社会保険料とか、そういうのも大変だと話していました。続いて森トラストの伊達社長です」
伊達美和子社長
「企業から見ると、選択的夫婦別姓については何ら問題はないと思います。我々の会社としてもビジネスネームを使いながら仕事をしている方も多いのが現状で、それに対して、戸籍上の名前を使い、給与関係、社会保障関係の対応をしているという状況ですね。つまり、ダブルネームの管理をしているわけですが、それらがシンプルになるという意味では、企業としては何ら問題がないというふうに思っています」
「一方で、女性が自立して活躍していくべきだという考え方と、かつ労働力としても社会で不足しているということを考えると、それは女性だけの権利という話ではなくて、社会としても望まれている姿だと思うんですね」
「つまり、フルタイムで働きたいと思う人が働けるという環境にしていく必要があると思うんですけれども、それを阻害している要因が日本の“家制度”であると思います。その“家制度”と結びつくのが“夫婦同姓を義務づける法律”だと思いますので、そういう意味では夫婦別姓選択ができるという環境になるということは、女性の自立を促すという意味で、もしくは社会的に昭和のシステム、もしくはもっと前ですかね、明治のシステムから、令和のモデルとして変えていくということがまずもって一番の意義深いことではないかなというふうに思っています」
城間記者
「伊達社長はあくまで“選択式”夫婦別姓なので、100%の人がそうするわけではないという話もしていました。夫婦が同じ姓を名乗る習慣が明治の時代から定着している日本では、選択的夫婦別姓の制度が導入されても、もしかしたらそちらを選ぶという人は少ないのかもしれないです。ただ、そういう場合でも、少数者に対して社会がきちんと対応できるような環境を整備していかなくてはいけないと話していました」
庭野解説委員
「やっぱり『選択できる』ということが本当に豊かな社会だと思うんですね。どっちかに全部そろえてしまうというよりは。世界でも夫婦の姓を同じにしなければならないというような法律があるというのは、実は日本だけなんです。『一律ではなくて選べるようにしてほしい』という切実な声にどこまで政府が応えていくのかということがすごく問われていると思いますね」
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。
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