ZHD・LINE両トップが語る未来(前)
今月、ヤフーの親会社のZホールディングスとLINEが経営統合し、日本最大級のIT企業が誕生した。日本テレビは、Zホールディングスの川邊健太郎社長と共同代表となったLINEの出澤剛社長に単独インタビューを行った。そこで語られた今後の戦略とは―
■赤と緑のツートンカラー
「ど派手でしょ」「ベテラン漫才コンビみたいでしょ」。両社長はヤフーのイメージ「赤」とLINEのイメージカラー「緑」のツートンカラーのネクタイをおそろいで身に着けて現れた。1年4か月前の経営統合の発表時、両社長はお互い相手会社のイメージカラーのネクタイを身に着けて壇上に立った。今回、2人が共に2色ストライプのネクタイにしたことが「統合完了の象徴」だと2人はいう。経営統合の狙いとは―
川邊健太郎氏(以下、川邊)「やはりユーザーにとって意味ある経営統合とならないと、何の価値もないと思っております。この日本でまだまだ解決できてないようないろいろな社会的課題を、情報技術の力を使って解決して、人々の生活をもっと豊かでもっと便利にしていく。これを徹底的にやっていきたいなと」
出澤剛氏(以下、出澤)「特にコロナにおいて、いろんな不便が顕在化すると思うんですけれども、それを技術の力を使って解決する、圧倒的な便利なサービスで解決することが、2社から出てくると、統合もユーザーの皆さんにとって、すごくわかりやすくって、両社が一緒になり、2社の力を結集して、ユーザーにとって圧倒的に便利なものが、少しでも早く実現できればと思っています」
■「LINEは『巨大な隕石』」
もともと2社はライバル関係だった。お互いどのような印象だったのだろうか―
Q「川邊さんはLINEを使っていますか?」
川邊「サービスが出てきた直後から当然使っています。LINEが登場したときは、サービスもそうですけど、会社もそうですけど、我々にとっては『突然訪れた巨大な隕石』っていう感じでした。ちょうど2011年とかってスマートフォンが普及し始めた頃で、まだいわゆる『キラーアプリケーション』みたいなものは出てないんです。我々も、何をしたら皆使ってくれるのかなって、すごい試行錯誤した時期に、突然本当に、隕石とか彗星のように現れて、うわぁっとユーザーを獲得してしまって、僕自身も1ユーザーとして、ものすごい便利に使わせてもらったんで、本当にびっくりしたという印象でした」
Q「LINEの登場により、ヤフーの脅威になると思いましたか?」
川邊「全てですけれども、やっぱりインターネットのサービスの事業者ってお互い、ユーザーの時間の奪い合いみたいなものですよ。特にヤフーの場合も、毎日何度使ってもらえるかっていうところで勝負をしているつもりなんですけども、やはりLINEの場合、コミュニケーションサービスだから毎日何度も何度も使っちゃうんですよね。ですからこの頻度はかなわないなと思ってます」
一方、LINEの出澤氏はヤフーニュースなどのZホールディングスのサービスについて―
出澤「すごく幅広いサービスがありますんで、私個人で言うとYahoo!ニュースだったりとか一休だったりZOZOだったり、もちろんPayPayもありますし、そこは幅広く『コマースサービス』から『情報サービス』まで幅広く網羅されている。例えばLINEで言うとコミュニケーション事業は非常に強いんですけれども、例えばコマース事業はそれほど強いサービスを持っていません。ペイメントの事業であれば、2社の競争関係性っていう中で、やっぱりすごくPayPayの作りが素晴らしいなって思うし、そういう意味で言うと、LINEがないものを、かなりたくさん持ってるというのが私の印象でもあって、またこの統合に向かうた最初のきっかけでもあったということです」
■「対等の精神でプライドをぶつけ合う」
Q「今回の経営統合を対等な形にした理由はなんですか?」
川邊「当然一緒にやっていきましょうという経営統合の交渉をしていただけに、やっぱりどういうコンセプトで今後やっていこうかってときに、本当に対等の精神で、お互い日本の誰しもが使うようなサービスを作っているっていう、ある種の『モノ作り』に対するプライドみたいなものもありますし、そういうものをお互い対等の精神でぶつけ合うことによって、新たなそういう『モノ作り』文化ですとか、具体的なサービスが出てくるんじゃないのかなという話になって、対等な経営統合をやっていこうということになります」
出澤「一番大きな志というか、目指す世界だったりとか、あるいは置かれている競争環境が非常に似通っていて、やはりインターネットって、一極集中しやすいビジネスサービスで、それが国をまたいで起こるので、海外に今一極集中しつつある中で、日本としての、日本の事業会社としての価値っていうのを出さなきゃいけないというところがあって、そういった行動を見てる世界観とか、競争環境とかそういったところも一緒でしたし、どっちが上下ということではなくて、ともに、携えて一緒に走っていこうということで、対等の精神によっての統合でした」
インターネットのビジネスが「海外に今一極集中しつつある」という出澤氏の発言は、アメリカの巨大IT企業「GAFA」や中国の「BATH」に対する危機感だ。今回の統合でGAFAに対抗していくためにはどういう戦略があるのか―後編へ続く。