「農業×デジタル」で食・農の未来は
農水省が農業分野のDX(=デジタルトランスフォーメーション)の構想をとりまとめた。さまざまな課題を抱える日本の農業がデジタル技術で大きく変わろうとしている。
■消費者に価値を届ける農業に
農水省がとりまとめた「農業DX構想」は、2030年を展望し、農業がデジタル変革を進める上での羅針盤だ。農業分野でのデジタル化は、スマート農業などでは進んでいるものの、農業での現場では意識が高いとは言えない。
「デジタル化」と言えば、行政手続きのオンライン化か、ごく一部で行われている先端技術を使った農業であって、自分たちにはあまり関係ないと思っている農家も少なくない。しかし、「DX構想」では、デジタルで消費者と生産者の関係は大きく変わり、「消費者ニーズを起点にしながら価値を届けられる農業」が実現するとしている。
■高齢化などの課題解決、その先へ
高齢化や労働力不足が進む中、必要とされる食料の安定供給を将来も維持するために、農業は新技術で省力化を進めながら、消費者に評価される農産物や食品を提供する必要がある。
構想の報告書には、ドローンでの農薬散布や自動走行トラクター、データを活用した農地管理や需要予測などの具体例が並ぶ。また、補助金の申請や行政手続きなどをオンラインで行える「eMAFF(=農水省共通申請サービス)」で、農業の作業支援や情報連携も進めるという。
■DXがひらく新たなストーリー
農水省はさらにその先、DX構想が実現したときの農業や消費者の様子を8つのストーリーで示した。
*新しく農業を始める人でも、AIでノウハウや農地などの情報が手に入り、需要に応じた生産計画が即座にできる「稼げる農業の現場」。
*酪農経営者は、家畜の遺伝子や体調のデータを駆使し、これまでの手作業も自動化された畜産経営を実現。
*消費者は生産方法や産地とのつながりを実感しながら農作物を選び、外食産業は出荷量や消費のリアルタイムのデータから無駄なく仕入れやメニュー作りができる、など。
DXによって、生産現場、流通、消費者などに新たなつながりが生まれ、イノベーションが促進され、消費者や利用者の目線が徹底されるという。若い人材もひき付け、未来の農業と食をひらくために、スピード感をもったデジタル構想の進展が鍵となる。