最低賃金アップは経済に×?
コロナ禍で企業が極力オンラインでの会見を選ぶ中、4月15日、中小企業を支援する3つの団体があえて合同でリアルの会見に踏み切りました。そこまでの行動をとらせた背景には、このままでは政府が中小企業や小規模事業者を窮状に追い込むという強い懸念がありました。
■菅首相の発言で危機感■
会見は日本商工会議所と主に従業員5人以下の企業を会員とする全国商工会連合会、中小企業を組織化して支援する全国中小企業団体中央会の3団体によって行われました。
日本商工会議所の三村明夫会頭は、3団体合同で会見した理由について、「菅首相が3月の経済財政諮問会議で『最低賃金をより早期に1000円とすることを目指す』と発言し、引き上げへの意欲を示したことから、全国の中小企業から『最低賃金の大幅な引き上げが行われるのではないか』との不安の声があがっているため」と説明しました。
また日商の塚本隆史労働委員長は、「2016年から4年連続で明確な算定根拠が示されないまま、政府の方針で、3%台の大幅な最低賃金の引き上げが行われてきた」と指摘し、ことしは政府の方針決定の際に中小企業の実態が十分考慮されるよう、要望書をまとめたと説明しました。
■最低賃金引き上げが“招く”働き手へのマイナス■
日商が企業に対して最低賃金が仮に30円引き上げられた場合の対応策をたずねたところ、雇用や事業継続でマイナスの回答が寄せられました。
具体的には、以下のようになっています。(複数回答による)
・パート、アルバイトなどの雇用を削減する=18.3%
・パート、アルバイトなどの新規採用抑制=24.9%
・ボーナスカット=28.4%
・事業規模の縮小=6.2%
・設備投資の抑制=42.1%
もし設備投資が抑制されれば、デジタル化などによる生産性向上が阻害されることになり、中小企業の利益拡大が遅れ、賃金の原資も増えない、と日商は分析しています。
全国中小企業団体中央会の平栄三副会長は最低賃金の引き上げは経営者の「事業を継続したい、雇用を維持したい」という思いを切り捨てるにとどまらず、企業の倒産や失業者の増加を招く可能性を大いに含んでいることを政府は認識して欲しい、と訴えました。
全国商工会連合会には事業者から、「最低賃金が上昇すると、障害がありながらも就労意欲が高い人を採用しにくい環境になっていく」、「この状況で引き上げられると資金繰りが圧迫されてしまう」といった声が寄せられているということです。