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温暖化で米ピンチ?高温でイネ育てる新技術

2021年5月15日 15:33
温暖化で米ピンチ?高温でイネ育てる新技術

温暖化による米の収穫への影響が心配される中、「高温に強い米」を育てる研究が進められています。

■イネの生産性を26パーセントアップ

先月、東京大学の研究チームが行った発表が注目されています。例えば40℃といった、気温が高い環境でもイネの生産性をおよそ26%向上させることに成功したというのです。そもそも、イネは気温が高すぎる場所での栽培には向いていないとされています。

今回、研究チームはその原因に迫るため、イネに含まれる「ルビスコ」というタンパク質に注目。気温が高い環境では、この「ルビスコ」が働かなくなり、イネの成長を妨げる要因になっていることを突き止めました。

そして、遺伝子組み換えの技術によって、イネの細胞内に「ルビスコ」と「ルビスコの働きを助ける物質」をより多く発生させることで、イネの成長を促すことを試み、効果を確認したということです。

■温暖化で米の収穫量に影響

研究の背景には、温暖化の影響に対する危機感があります。昨年の日本の平均気温は、1898年の統計開始以降、過去最高を記録。農水省によると、米への影響はすでに出始めていて、一部の地域では収穫量の減少が確認されています。

今回、高温下でイネの生産性を上げる発表を行った研究チームは、この栽培技術が確立されれば、「温暖化を考慮しても米の安定した収穫が見込める」としています。

■温暖化で米の品質にも影響

また、温暖化で米の品質に影響が出るという予測も。このまま温暖化が進めば、九州地方を中心に品質のレベルが高いとされる「一等米」は収穫されにくくなるということで、今世紀半ばにはここ数年に比べて約3割低下するという報告があります。

■“日本一暑い”熊谷で収穫される米

そのような中、“日本一暑い”を逆手にとったPRで知られる埼玉県の熊谷市では「高温でも品質の良い米」が開発されました。「「彩(さい)のきずな」という品種の米。実はこの米、“最も暑い夏”に起きたアクシデントから生まれたというのです。

熊谷市にある埼玉県農林総合研究センター(現:埼玉県農業技術研究センター)では、2007年当時、「生育するのが早く、病気や害虫にも強い」品種を作ることを目指して、新品種の開発に取り組んでいました。新品種の候補として、約300種を育てていたということです。

しかしその夏、熊谷市では当時の国内最高気温となった40.9℃を記録。育てていた約300種のほとんどが暑さに耐えきれず、米が白く濁って品質が落ちてしましました。

ただ、その中でも唯一白く濁らなかった品種があったのです。それが「彩のきずな」になりました。「彩のきずな」は暑い日にも根から水を吸い上げ、葉や穂の温度を下げるという特徴があるため、高温の環境にも強いといいます。埼玉県のホームページなどでは、「さわやかな甘みとうまさ、弾力のあるなめらかな食感」が魅力と、紹介されています。

研究途中に偶然見つかった品種「彩のきずな」。2014年には品種登録され、一般にも流通しています。

写真:埼玉県提供