“十倉経団連”始動~地球が悲鳴あげている
経団連は、6月1日に住友化学の十倉雅和会長をトップに据え“十倉経団連”を始動する。
就任にあたり十倉雅和会長は、日本が取り組むべき複数の課題について、自身の見解を述べた。
◆「2050年のカーボンニュートラルは時間はあまりない」
十倉会長は菅政権が掲げた「2050年のカーボンニュートラル」について、「時間があるようであまりない」との認識を示した。
その理由について、「新しい要素技術を確立するには5年から10年かかり、実証プラントをつくって、確かめて、スケールアップして、設備投資をやって、設備が完成してブラッシュアップ、チューンナップをやって、それをたくさん広めていって初めて(カーボンニュートラルに)きくわけで、優に15年から20年はかかる」と具体的な根拠を示した。その上で、時間がかかるがゆえに、「すぐにでも着手しなきゃいけない」と意気込みを示した。
また十倉会長は「地球が悲鳴をあげている」と気候変動への危機意識を示し、「後世の人々が暮らしていける地球を残すためにも、絶対にカーボンニュートラルをやらなくてはならず、日本が先頭に立って行って世界にも貢献し、その先頭に経団連は立っていきたい」と決意を述べた。その際、「単に情熱とか意気込みだけではやれず、科学に基づいた議論をしていかなくてはいけない」との考えを示した。
2030年の46%を実現するために一番大きく貢献するのは“電源の脱炭素化”で、政府には近く出すエネルギー基本計画で再生可能エネルギー、原子力、火力、などそれぞれの電源割合をどうするのか、エネルギーミックスをしっかりと書くことを期待したいと述べた。
◆「社会から支持されない経団連は政治への影響力も持ち得ない」
経団連の役割について、「経済界、産業界の利益を代表する、という視点は少し変えなくてはいけない」と述べた。
十倉会長は、社会全体の利益を求めるといった視点を入れないと、社会から支持される経団連になれず、それでは「政治への影響力も持ち得ない」との見方を示した。
◆冬場に入る前に7~8割のワクチン完了を
新型コロナウイルスについては「一刻も早い回復が喫緊の課題だ」と述べた上で、(感染が拡大する季節の)冬場より前に(少なくとも)7~8割の人がワクチン接種を終え、集団免疫をつくることが重要だとの見解を示した。
“それに向けてどういうアクションをとるべきか、政府もそのつもりだと思うが、逆算して工程表をつくりそれに向かって日本全体が突き進むということが一番肝要”“経団連はそのための協力は惜しまない”と積極的な姿勢を見せた。
また、ある調査では「絶対にワクチン接種を受ける」と答えたのが5割だったとして、専門家の「ワクチン接種は心配するほどのものではない」という意見を国民にもっと出した方が良いとの見解を示した。さらにワクチン接種を広めるために経済界としても職場での接種や産業医、看護師の協力、ワクチン会場の提供などに前向きに対応するとした。
コロナ禍でのオリンピックの開催については、「東京オリンピック・パラリンピックは大切な意義があるのも事実」「いろんな意見もあるのはわかるが、やる以上は、『安全第一』で、それに向けた確かな運営方法が大前提だ」と強調した。その上で、ワクチン対策の状況も見て、オリンピック開催についての“正しい判断”をすべきだと述べた。
中西宏明前会長の突然の退任で新会長となった十倉氏。コロナ禍からの日本経済再生に、日本企業の力を結集して臨むことが期待される。