トップに聞く“曲がり角”金融業界の今後は
30代の若手社長の誕生など、新しいビジネスを模索している三井住友フィナンシャルグループ。厳しい状況にある金融業界をどうかじ取りしていくのか、そのトップを単独取材しました。
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太田純社長、63歳。三井住友銀行などを傘下にもつSMBCグループ10万人のトップです。この日は若手社員とのランチミーティング。
太田社長「なんでもかんでも、好きにしゃべってください」
すると、ある社員から業務に使う新たなコミュニケーションツールについて提案がありました。
若手社員「うちのグループでもそういうのを導入してみてはいかがかなと」
太田社長「まずやってみて失敗したらそれでいいから、その失敗から教訓を得て、次それを変えてまたやったらいい。とにかくいいアイデアあったら早くあげておいで」
太田社長は、今の金融業界に強い危機感を持っています。
太田社長「私が銀行に入ったのは1982年なんですけども、当時は預金さえ集めればお金を貸し出す先はいくらでもあって、自動的に儲かった。低金利がずっと続いていますから、銀行の収益環境はずっと悪いままですね、基本的にはね」
コロナ禍による政府の支援で企業の倒産が減り、実は今、金融業界の業績は好調です。しかし、それは一時しのぎ。今後、日本経済の停滞や、ペイペイ、楽天ペイなど新興企業との競争も激しくなり、融資の利ざやで稼ぐやり方だけでは通用しない状況です。
太田社長「金融の経営というのは『曲がり角』にきているといわれるんですけど、曲がりきって行くべき方向性はかなり明確に見えている」
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これからの金融業界の方向性とは? その一端がうかがえる場所を太田社長が訪れました。そこにはTシャツ姿の男性が。
「Tシャツで入らせていただきました」
「いいよいいよ」
並木亮さん、38歳。グループ最年少の社長です。SMBCでは、グループ内に新たに会社を10社設立。並木さんは中小企業のデジタル化を支援する会社の社長に就任しました。
太田社長「ある日、彼が訪ねてきて、私が社長やりますと。はっはっは、ええっ!て、聞いてねえし。でも大変な熱意と情熱でここまで大きくしてくれたし」
この日は、会社のサービスを紹介するための配信イベントの収録が行われていました。
並木さん「『プラリタウン』の並木でございます…」「もう一回いいですか」
太田社長「そっからかむか!」
太田社長「『本当に変わるということが求められているんだぞ』ということをアピールするために、わざわざ社内ベンチャーをつくって、言い出しっぺを社長にしているんですよ」
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さらに、三井住友銀行では家事代行会社などと提携し、高齢者の生活を支援するサービスを始めました。
太田社長「高齢者の悩みってお金だけじゃないんですよね。健康の悩みもあれば、家族と連絡をとりたいという悩みもあれば、きょうはちょっと体がつらいから家事ができないという悩みもあれば。『金融だけでございます』と言っては本当にその一部しかサービスできないわけですよね」
変わりつつある金融業界。しかし太田社長は、組織全体を一気に変えるのは容易ではないといいます。
太田社長「変わらない組織の一つの特徴って『成功体験』なんですよね。成功体験を持っている人って変わりづらい。いつまでもその成功体験にしがみつこうとするんですよね」
太田社長「(私はまず)100人、本当に真剣に変えたいと思っていろんな対話をしました。次のステップは、その100人にひとり100人変えてほしいと思っています。そうすると1万人になりますから、10万人の組織で1万人変わったら、変わると思うんですよね」
10万人、一人ひとりの意識を本当に変えられるのか。経営トップの手腕が問われます。