【解説】生成AIの広がりで電力消費が爆増…エネルギー基本計画どう見直す?
■アマゾン、マイクロソフト、オラクル…外資が日本に巨額投資
データセンター投資が活況だ。日本企業からは、そこまで大きな話は聞かないが、海外勢からは日本国内のデータセンター投資について、桁違いの発表が続いている。
・1月 アマゾンウェブサービス(=AWS)5年間で2.26兆円
・4月 マイクロソフト 2年間で4400億円
・4月 オラクル10年間で1.2兆円
超巨額投資を決めた外資系IT企業の経営陣の一人は、背景をこう説明した。「(AIの普及で)GPU(=膨大な計算を高速で行う画像処理装置)が出てくるとか、世界がどんどんそっちの方向に向かっている。データセンターの需要が、ものすごく多くなる。アメリカのいわゆるGAFAM系の企業は、もともと利益率が良いから、日本企業と違って大型投資が財務上の心配もなく、できる。海外からの対日投資が増えるのは、日本にとっても良いことでしょう」
データセンター需要の大幅拡大が見込めることに加えて、円安で日本への投資が割安になっている今、日本への大型投資が相次いでいるという。
■恐るべしAI等の電力使用 ドイツ1か国分も…
データセンター需要が拡大しているのは、日本だけではない。IEA(=世界エネルギー機関)の試算によると、2026年の世界の「データセンター・AI・暗号資産による電力消費量」は、2022年に比べて、最大でドイツ1か国分の年間電力消費量と同じ分、増えるという。
AIは大量の“計算”を超高速で行うなど、膨大な電力を消費するのだ。しかし、AIを金食い虫ならぬ、電力食い虫として問題視できるほど単純ではない。うまくAIを活用すれば、逆に電力の効率的な利用にも役立ち、電力消費を削減できる可能性もあるからだ。また、日本の事情からいけば、この人口減少、働き手不足が経済に打撃を与える中で、AIの活用は経済・社会を回すためにも必須となる。
■何から電力を得るのか 「エネルギー基本計画」どう改訂する?
AIはエネルギーを食う。だが、やめられない。では、エネルギーをどう賄うべきか?
日本は「2050年までに温室効果ガスの排出量を全体として実質ゼロにする」というカーボンニュートラルの目標を決めている。そのためには、今より火力発電を減らし、再生可能エネルギーと原子力発電を増やす必要があるとされている。
国内の発電電力量に占める原発の比率は、2022年度時点でおよそ5.6%にとどまっているが、政府はこれを2030年度には20~22%まで高めることを目標としている。
4月15日、東京電力は、ようやく原子力規制委員会の承認を得て、新潟県・柏崎刈羽原発7号機の原子炉への核燃料装填(そうてん)作業を開始した。原子炉を起動するための法律上最後のプロセスとなる。しかし、このプロセスとは別に、地元の同意を得る必要がある。
原発をめぐっては、日本は世界で最も厳しいといわれる審査基準を設け、安全性を高めているとする一方で、地元住民の不安や、核のゴミをどこに処分するのか決まっていないことなど、解決できていない問題があるのも事実だ。
■「エネルギーが即『国力』」
こうした中、エネルギー分野で影響力を持つ経済界のある大物は、こう言う。
「生成AIを含め、今後の『エネルギー(=即国力)』を考えれば、安全が確認された原発の再稼働は、やらざるを得ないでしょう」。
国力の維持・強化に、生成AIをはじめとするデジタルの活用は必須で、そのためにはエネルギーがいる。エネルギーの供給量やコストが国力を左右する。
では、どうエネルギーを賄うのか。火力は? 火力を減らさなければ、地球環境の破壊を食い止めることはできない。再生可能エネルギーは? それだけでは安定的な電力供給を得ることは難しい。
政府は、近く「エネルギー基本計画」の改定に着手する。見直しの際には、AIの活用拡大で増えることとなった電力使用量も反映して、日本が目指す電源構成を決める必要がある。これまでには、電源構成は2030年度しか明示されていないが、次の基本計画では、2035年度の目標も定める見通しだ。産業界と連携して、より実現を可能とするロードマップを策定する必要がある。