原子力政策の方針転換 「次世代原発」新たに建設可能に 安全性は…最前線を取材
政府は22日、福島第一原発の事故の教訓として維持してきた原子力政策を、大きく転換しました。「次世代原発」と言われる新たな原発の建設が可能になります。「次世代原発」とはどんなものなのか。その最前線をメディアで初めて取材しました。
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本州最北端・青森県の大間町といえば、今や、言わずと知れたマグロの町です。
漁師
「今これからだべ、脂がのってくるのは。値段もよくなってくるからね、頑張ろうという気持ちがわいてくるべ」
ただ、大間町は「原発の町」も目指していました。
海沿いにそびえ立つのは、大間原子力発電所です。まだ完成には至っていませんが、誘致が決まったのは1984年のことでした。
当時、“地域経済を活性化させる起爆剤”という声も少なくなかった原発。原発関係の仕事で新たな雇用が生まれ、人口の増加が見込まれることなどから、過疎化が進む地域にとって、期待される存在だったのです。
それから長い年月がたった2008年、ようやく建設が始まりましたが…。
電源開発 広報グループ・瀧上敦課長代理
「福島の事故を受けて、国の安全審査を受けている」
2011年、福島第一原発の事故以降、新たな原発の建設は津波や地震対策などの安全審査が厳しくなったため、大間原発についても10年以上、工事がほぼ進まない状態が続いています。
――いつ完成する予定ですか?
電源開発 広報グループ・瀧上敦課長代理
「完成は2030年度。そこから本格運転の開始」
多くの原発が廃炉となる中、震災後、新たに建つ原発は“大間が最後になるのでは”と、関係者の間でささやかれていました。
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政府もこれまで、新たな原発の建設については「想定していない」と繰り返してきましたが、22日、その方針を大きく転換し、原発を最大限活用することに。脱炭素と安定したエネルギー供給を両立するためだとして、今後、「次世代原発」と呼ばれる、新たな原発の建設を進めることにしたのです。
「次世代原発」とはどんなものなのか。私たちは、その最前線をメディアで初めて取材しました。
開発を進めているのは、これまで国内の原発をいくつも手がけてきた企業です。日々、開発チームで話し合われているのが「安全性の確保」です。
その最大の特徴は――
三菱重工・加藤顕彦原子力セグメント長
「炉心溶融(メルトダウン)対策の専用設備であるコアキャッチャ。(溶けた核燃料が)絶対外に出ないようにする」
福島第一原発事故の場合、メルトダウンで溶けた核燃料は圧力容器を突き破り、格納容器の底へ。そこで、万が一メルトダウンが発生した場合、「次世代原発」では溶けた核燃料をすぐにキャッチするスペースを確保。即、冷却できる機能も備えられているのです。
設計の約8割は終わっていて、2030年代の半ばには運転開始が可能だといいます。
安全性を高めたとされる新たな原発の建設ですが、政府の方針転換はあまりに早く、“議論不足だ”と指摘する専門家もいます。
元原子力委員会 委員長代理 長崎大学 鈴木達治郎教授
「福島事故を踏まえた段階で、負の遺産というか、解決しなければならない問題がたくさんある。核のゴミ問題、これは推進であろうが反対であろうが解決しなければならない課題。福島の廃炉の問題、賠償問題、山ほどあります。反省を踏まえて、きちんと整理した上で次の政策に移るのが通常の考え方」
政府は来年の通常国会で、原発の方針転換に関する法案を提出するとしています。