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2024年 どうなる電気料金~5月から補助金縮小で値上げに備えよ

2024年1月1日 10:00
2024年 どうなる電気料金~5月から補助金縮小で値上げに備えよ
2024年も電気代値上げが危惧される

生活に欠かせない電気。その値上げが気になるところだが、2024年5月以降には政府の補助金が終了し、標準的な使用量の家庭で最大910円値上がりする可能性がある。一方、2024年は原発再稼働が進む見通しだが、電気料金はどの程度値下げされるのか。
(経済部 岩田 明彦)

■「LNGはソールドアウト状態」 2024年も電気料金値上げ続く!?

「今後も電気料金が大きく値下がりすることはないですよ」

そう話すのは大手電力会社の関係者だ。近年の電気料金値上がりは、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景とした世界的なエネルギー危機が主な原因である。火力発電の燃料として使用される石炭・石油・天然ガス(LNG)などの化石燃料の高騰が電気料金の値上げにつながっている。

化石燃料の中でも特に二酸化炭素の排出量が他と比べて少ないLNGの需要が高く、世界で争奪戦となっているという。

2023年の「エネルギー白書」によると、ドイツでは天然ガスの輸入価格が平時に比べて一時10倍近くまで高騰。日本は主に長期契約や油価連動でLNGを調達しているため、欧州ほどではなかったが、2倍まで高騰した(ともに20年1月比)。また調達できなかったアジアの国々では計画停電を実施したところもあったとしている。

経済産業省で燃料政策を担当する関係者は、「2025年頃までLNGは世界的にソールドアウト状態」と、世界のLNG市場の見通しを示す。

ウクライナ侵攻後、ヨーロッパなどではロシア産以外の輸入を拡大している。その一方で近年、脱炭素社会実現への流れの中でガス田などへの開発・投資が減っていることから世界的なLNGの生産能力は増えず、需要増加に対応できていないという。上述の関係者は「少なくとも2025年頃まではLNGの需給は世界的にひっ迫が続く」と指摘している。

■6月以降に補助金終了で「全社値上げ」も?

大手電力会社10社中5社(北海道・東京・中部・九州・沖縄)は、2024年1月の電気料金を値上げすると公表している。

例えば東京電力の場合、標準的な使用量の家庭(一月あたり260kWh使用)で2023年12月と比べ5円上がって7464円。中部電力は24円上がって7109円など。値上げ理由は、いずれもLNGと原油の価格上昇が要因だとしている。

さらに2024年5月以降には全社で値上げの可能性もある。政府は現在、家庭向け電気料金に1kWhあたり3.5円を支援していて、その分だけ本来価格より「値引き」されている。しかし、この支援策が2024年5月にはおよそ半分に縮小、その後に終了する可能性があるのだ。

■東京電力VS関西電力 原発再稼働へ

大手電力の中で最安レベルなのが関西電力と九州電力。例えば関西電力の場合、2024年1月の電気料金は標準的な使用量の家庭で6146円と公表している。東京電力と関西電力の電気料金を比較してみると、関西電力の電気料金の方が約2割も安いことが分かる。

2社の一番の違いは原発が稼働しているか否かである。関西電力は所有する原発7基全てを再稼働している。その一方で、東京電力は原発の再稼働はゼロ、その分を火力発電で賄っているのだ。

ただ、東京電力の原発が2024年、再稼働する可能性が出てきている。

注目されているのは、新潟県にある東京電力・柏崎刈羽原発。発電所内には7基の原子炉があり、総出力は1つの原子力発電所としては世界最大級とされている。そのうち6号機と7号機が2024年に再稼働する可能性が出てきている。

では、原発の再稼働による値下げ効果はいかほどか。西日本に本社がある電力関係者は、値下げ効果は限定的だろうと話す。

「首都圏の莫大な電力需要のうち原発2基ではお粗末。値下げしても月100円くらいやと思います」

つまり東電と関電では、両社の総販売電力量における原発の発電量が占める割合に圧倒的な差があるという。例えば東京電力が2023年5月に公表した計画では、年間販売電力量のうち柏崎刈羽原発2基が再稼働した場合の原発の発電量が占める割合は約6%。一方で、関西電力は約20%(2022年度実績)。結果、柏崎刈羽原発2基が再稼働しても値下げ効果は関西電力ほど期待できないという。

福島第一原発事故から2024年で13年となる。エネルギー危機の影響もあり高騰する電気料金に苦しみ、原発再稼働によって電気料金が下がることを期待する声は大きくなっている。しかし、電気料金値下げには期待しすぎない方がよさそうである。