日産が下請け業者に計30億円の減額を要求 昔から慣行化されていた可能性も…
日産自動車が数年前から、下請け業者に対し一方的な納入金額の減額を行い下請法に違反したとして、公正取引委員会は近く、勧告を行う見通しだ。政府や経済界などから賃上げのための適正な価格転嫁が呼び掛けられる中、こうした事態はなぜ起こったのか。ある関係者からは、日産内で以前から慣行化されてきた可能性もあるとの声もあがる。日産は今後、どのように説明していくのだろうか。
■日産が下請法違反で公取委が近く勧告へ
日産自動車が遅くとも数年前から、タイヤホイールなどの部品を製造する30社以上の下請け業者との取引で、事前に取り決めた金額から一方的に数%減らして納入金額を支払っていたことが関係者への取材でわかった。
こうした減額はあわせておよそ30億円にのぼり、中には10億円以上減額された業者もあったとみられている。
価格決定後の減額は下請け業者側に原因がある場合を除いて禁止されていて、公正取引委員会は日産の一方的な減額が下請法違反にあたるとして再発防止を求める勧告を近く行う見通しだ。
■政府や経済界などが「賃上げ」のための適切な価格転嫁を促す中…
公取委では、ここ数年の原材料費や燃料費の高騰を受けてコストが上昇する中、大企業と下請け企業との取引価格が据え置かれている状況を問題視していた。
そのためおととし、価格転嫁が適正に行われているか、緊急の調査を実施し、主体的に価格協議を行っていなかった企業として、13社の社名を公表する異例の事態に至った。
また去年も、政府とともに、中小企業が人件費を価格転嫁できるよう、価格協議の指針を公表している。
「今年は、中小企業における構造的な賃金引き上げへと波及させていくことが不可欠」
経団連の十倉会長をはじめとして経済界でも、長引くデフレ脱却のため、中小企業が適正に価格転嫁を行えるよう呼び掛けている中、なぜこのような事態になったのか。
■「指摘を受けるまで問題が表面化しなかったのでは」との声も
関係者からは、日産は公取委が違法な減額だと認定する期間より前から、このような行為を行っていた可能性があるとの指摘も出ている。
元々、「コストを削減することは良いことだ」という認識は多くの企業にあった。その上で近年、適正な価格転嫁がこれまで以上に重視されるようになった。
関係者からは、世の中の“適正な価格転嫁を重視”する流れの中で、本来なら日産は「うちの会社は大丈夫だろうか」と自社の取引をきちんと調べるべきだった。しかし自分事として捉えず、公取委に指摘を受けるまで問題が表面化しなかったのではないか、との声も。
「組織の体質」というものは、末端の人間が変えることは難しい。
記者も企業の組織不正を過去、取材した経験があるが、その際に企業倫理の専門家が「組織全体の意識改革のためには、企業トップが号令をかけ、明確な指針を示すことが非常に重要だ」と語っていたのが印象に残っている。
今回の日産のケースでも、トップが主導する形で価格転嫁への意識変革が行われていたのかどうか。
今後、詳しい検証と、検証結果の速やかな公表が求められる。
■日産「支払うべき金額は全額支払った」減額では過去最高額か
日産は日本テレビの取材に対し、「公正取引委員会から指摘、ならびに調査を受け、最終的な結果を待っているところ」とコメントし、すでに下請け業者に対し、支払うべき金額の全額を支払ったとしている。
下請法で定められた親事業者の禁止行為の1つ「下請代金の減額」として、およそ30億円は、下請法施行以来、最高額になるとみられている。