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英スーパーマーケットでトマトなどが品薄 レストランでは「白いピザ」も登場...そのワケは?

2023年3月12日 19:53
英スーパーマーケットでトマトなどが品薄 レストランでは「白いピザ」も登場...そのワケは?
空っぽのスーパーマーケットのトマト売り場

イギリスのスーパーマーケットで、トマトなど一部の野菜の品薄が続いています。政府が対応を急いでいますが、ブレグジットとの関係性を指摘する声も挙がっていて、懸念が強まっています。

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■スーパーマーケットからトマトが消える...

イギリス・ロンドンにある大型スーパーマーケット。色とりどりの野菜や果物が並ぶ中、空っぽの棚が目立ちます。

実は今、トマトやきゅうり、ピーマンなど一部の野菜が品薄になっているのです。

大手スーパーマーケットでは、購入数の制限を設けるなどの対策を講じていますが、トマトなどの品薄状態が2週間以上続いています。長引く品薄に、イギリスメディアでは、トマトやピーマンなどを使わずにできる料理のレシピを特集するなど、食卓にも影響が出始めています。

こうした事態が長引いていることで、一般家庭だけでなく、飲食業界にも影響が...ロンドンに拠点を置くイタリア料理レストランの団体は、缶詰だけでなく生のトマトを多く使うイタリア料理店では、長引くトマト不足の影響が深刻になっているとしていて、トマトソースを使わないメニューの提供を始めた店も出てきていると明らかにしています。

私たちが取材したイングランド東部にあるピザレストランも、こうした事態を受けて、カブだけで作った「白いピザ」を考案。あの手この手で対応をしている状態です。

■トマト不足のワケは輸入先の天候不順だけ?

ここまでトマトなどの野菜が品薄になっている原因は何なのでしょうか?

1つには、冬の間の主な輸入先となっている原産国スペインなどで、天候不順によりトマトなどが不作だったことが挙げられています。それに加え、イギリスメディアによると生産量が減った際に仕入れ価格を上げてでも在庫を確保しようとするヨーロッパ各国のスーパーマーケットと異なり、イギリスのスーパーなどは生産量が減っても価格を固定しようとする傾向にあるため、生産者には卸すメリットが少ないといいます。

イギリスでも個人経営の小売店では品薄のはずのトマトやピーマンを置く店がありました。

店長は、「大手スーパーマーケットの中には、品薄でも価格の上昇を嫌って、割高価格では仕入れないところもある。我々は生産者と交渉して、多少高い値段でも卸してくれるよう頼んでいる」と話していました。

■「現実を直視していない!」ブレグジットが原因と指摘する声も

一方で、別の原因を指摘する声もあります。私たちが取材したのは、イギリスの農家らの保護を訴えているロビー団体の代表リズ・ウェブスター氏。

ウェブスター氏は、今回の事態が、イギリスのEU(=ヨーロッパ連合)からの離脱、いわゆる「ブレグジット」と関係していると主張し、「政府は最初から現実を直視していない」と批判しています。

ブレグジットによって、EU圏とのビザ手続きの優遇措置がなくなったことなどから、EUからの労働者が減少。労働者不足によって、イギリス国内での野菜の生産量の減少につながっているといいます。

ウェブスター氏
「ブレグジットの後、農家は労働力不足に悩まされるようになりました。生産者は、自分たちの作物が畑で腐っているのを目の当たりにしているのです。だから、みんなリスクを避けて生産を調整しているので、生産量が減っているのです」

実際に、1990年には134,000トンだったイギリス国内でのトマトの生産量が、2021年には68,000トンとほぼ半減。また、ウェブスター氏は、ブレグジットによってヨーロッパからのトラックなどでの輸送も煩雑になったため、生産者側は、天候不順などで供給量が減った場合に、イギリスへの輸出ではなく、EU内での輸出を優先するようになったと指摘。

ウェブスター氏
「国内での供給が途絶え、さらにブレグジットのせいで、ヨーロッパからの輸入が減ったため、今のような状況に陥っているのです」

その上で、ウェブスター氏は、「食肉など他の領域でも同じようなことが起きる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。イギリスメディアも、こうした事態は複合的な要因で引き起こされていると分析。その上で、「政府は、適切な食糧戦略を策定することに完全に失敗している」と指摘しています。

イギリス政府は、大手スーパーマーケットなどとともに品薄対策の会合を開くなど対応を急いでいますが、品薄は5月初旬まで続くという予測も出ていて、懸念が強まっています。

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