現代美術家の村上隆さん NYで「NFT」まつわる個展「デジタルとリアルアートの架け橋に」
現代美術家の村上隆さんが、世界にひとつしかないことを証明する技術「NFT」にまつわる作品などを集め、アメリカ・ニューヨークで個展を開催しています。
■村上隆さんの「NFT」にまつわる作品100作以上がリアルに展示
村上さんの個展の会場となったのは、近代・現代美術の展示で有名な「ガゴシアン・ギャラリー」
会場でまず目をひくのは代表作である花をモチーフにした村上さん自身初のNFTアート「Murakami.Flowers」シリーズです。
AR(拡張現実)技術で作品にちなんだコンテンツがみられるようになっていて、スナップチャットのアプリをつかうと床から草が生え、作品の花が現れるのを画面越しに楽しむことができます。
■NFTのアバターが現実世界の肖像画に
また、別の展示室ではNFTのアバターが現実世界の肖像画となって展示されています。
新興NFTデザインコレクティブ「RTFKT」とのコラボレーションで制作された「Clone X NFT」シリーズで、30点近くにのぼります。
展示されている作品のもととなったアバターはネットで購入が可能で、1体日本円でおよそ数百万円から1億円を超える値段で取引されています。
個展会場は、メタバースで再現され、世界中からオンラインで作品を鑑賞することが可能です。
今回の個展のタイトルは、「An Arrow through History.(歴史を射抜く矢)」村上さんは、「日本の文化はもともとユーラシア大陸から来たもので、そこから先のメタバース、芸術の歴史を一本の矢で射抜く」としています。
■村上隆さんが取り組む「NFT」とはー
「NFT」とはNonFungibleToken(非代替性トークン)の略で、デジタル空間にあるアートなどの作品が「オリジナル」だと証明することができる新しい認証技術です。
NFTはアート作品だけでなく、スポーツやゲームファッション界にも広がっていて、アメリカでは「メタ」がインスタグラムにNFTを投稿出来る機能を試験的に導入しました。近々フェイスブックでも導入する予定だとしています。
また、著名人の作品だけでなく、全くの無名の作品に高値が付くケースも多く、去年、8歳の日本の少年が夏休みの自由研究をきっかけに描いたデジタルアートの中には、一点180万円相当で取引されたものもあります。
■村上隆さんがNFTに進出するワケ
個展の意義について村上隆さんは。
――『NFT』にまつわる作品に取り組む意義とは?
リアルアートの価値観は非常に中央集権的なんですね。一方で、ブロックチェーンなど分散型インターネット社会の「Web3」の概念において、NFTアートは非中央集権的です。その相反する業界に架け橋を架けることが今回の展覧会の目的です。それができるのは、中央集権的な価値観を十分に享受した自分ではないかと思いました。
――ニューヨークで開催する意味は?
現代美術のキャピタルはやっぱりニューヨークなので、ここで評価されれば全世界的に流布されるので、ニューヨークという町で現代美術の展覧会をするというのは、真価を問うとても特別なアクションだと思っています。
――NFTアートの今後について
多分もう1年後にはブロックチェーンを通じて、素人の方もNFTアートを流通させることができるでしょう。今はNFTについて色々言っていますけれども、半年後にはNFTアートは一般的な単なる風景になると思っています。
村上さんのニューヨークでの個展は、6月25日まで開催される予定です。