ガザ情勢…大国の思惑交錯 中国はパレスチナ寄り 交渉カードに“イラン” ロシアに漁夫の利?【#みんなのギモン】
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区への地上侵攻に踏み切る可能性が高まっています。イスラエルとパレスチナの対立になぜ、世界が注目するのでしょうか。今回は以下のポイントを中心に「面」で詳しく解説します。
●米中の動き
●ロシアに漁夫の利?
イスラエルを訪問しているアメリカのブリンケン国務長官は、バイデン大統領が18日にイスラエルを訪問すると発表しました。
イスラエルとの連帯を改めて打ち出すと共に、イランなどに対し軍事介入しないよう、けん制する狙いがあります。また、必要な軍事支援やハマスに拘束された人質の解放に関して協議するほか、人道支援についても話し合うとしています。
この武力衝突をめぐってアメリカや中国などの大国が、それぞれの思惑をちらつかせて動き出しています。今後の戦況にも大きく影響を与えるかもしれないです。
まずは、イスラエルとパレスチナに対する世界情勢の相関関係を確認します。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が攻撃の応酬をしています。アメリカはイスラエルを支持しており、イスラエルにとっての最大の後ろ盾です。一方で、中国はここにきてパレスチナ寄りの態度を示しています。そして思わぬ恩恵、“漁夫の利”を受けそうなのがロシアです。
そもそもなぜ、アメリカがユダヤ人中心の国家であるイスラエルを支持するのでしょうか。
アメリカにいるユダヤ人の人口はわずか2%ほどですが、金融分野など中心に豊富な資金を持っている層が多いです。この富裕層の政治献金がアメリカ政界を潤す構図があります。民主党・共和党のどちらにも大切な支持層なのです。
バイデン大統領はこの間、イスラエルへの「揺るぎない支持」をずっと強調しています。そのため、ガザ地区への地上侵攻そのものは容認するのではないかということです。
ただ、あまりにやり過ぎると国際社会からの非難がアメリカにも向きかねません。それは避けたいということで、バイデン大統領は「人道危機への対応が優先事項だ」とも述べており、イスラエルに対しては国際法を遵守することも求めています。
そしてそのアメリカが“競争相手”と位置づける中国の動きが非常に興味深いです。
14日にブリンケン国務長官が中国の王毅外相と電話会談しました。イランが介入しないよう働きかけることを求めたとみられます。イランは、イスラエルと長年敵対する国です。
というのも、イランとハマスがとても親密だからです。14日にはイランの外相がハマスの指導者と会談したと世界中に報じられるなど、その親密ぶりを隠そうともしていません。そのため、アメリカはイランの介入を警戒していて、そのイランと太いパイプを持つ中国にお願いをしたわけです。
イランが介入すると、戦いの場が中東全域に一気に広がってしまうおそれがあります。別の国々もそこに加わる可能性があります。だからこそ、ブリンケン長官は中国にお願いしたわけですが、その後、中国はスピーディーな、驚くべき行動を見せました。
15日、王毅外相はイランの外相と電話会談しました。アメリカの求めに応じることはなく、むしろイスラエル軍の侵攻に反対する立場を示しました。
会談後の発表文では、「中国はパレスチナ人の民族権利を守る正義の事業を支持する」と言い切ったのです。つまり、パレスチナ側への配慮を見せた形です。
結果として、中国はいま、アメリカと向きあう上でのイランという交渉カードを手元に持ち続けている形となっています。この問題に関する国際会議の開催も提唱していて、中東での影響力を高めていきたい狙いが透けて見えます。
アメリカがイスラエル支援に注力するほど、これまで続けてきたウクライナへの支援が手薄になるのではないかとみられています。実際、アメリカ議会でそういった動きが出てきています。それはロシアにとって好都合になるということです。
そのようななか、驚きの発言がありました。プーチン大統領は最近、パレスチナの現状について「子どもと女性には手を出すな」と述べたのです。
民間人に多くの被害を出しているのは、ロシアのウクライナ侵攻も同じことです。ロシアにウクライナの子どもたちを連れ去っているのではないかと、国際的にも非難されています。
耳を疑うような発言はこれにとどまりません。
ロイター通信によると16日、プーチン大統領は中東の周辺国の首脳との電話会談の際に、「民間人に対するいかなる暴力も容認できない」との考えを伝えたとのことです。どういうつもりでこうした発言をしたのか、信じがたいところがあります。
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戦争になると国益がむき出しになります。そのために耳を疑う論理が平然と持ち出されてきます。そして、市民の生活や命が二の次になることに、やるせなさが募るばかりです。
(2023年10月17日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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