「処理水」で緊張高まる中国…大使館は邦人に「日本語控えて」 塩の買い占め・“汚染水”拡散マップも 影響は日本全国に
福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、中国では塩の買い占めが起き、根拠不明の動画が流れるなど混乱が生じています。日本大使館は現地の邦人に注意喚起のメールを出しました。また大分県のハマチが出荷停止となるなど、影響は日本全国に広がっています。
中国に住む在留邦人の元に25日、日本大使館から注意喚起のメールが届きました。
中国・北京支局の記者も受け取りました。そこには「外出する際には、不必要に日本語を大きな声で話さないなど、慎重な言動を心がける」と書いてありました。「不必要に日本語を話すのは控えよ」という内容です。
中国では、塩を求めて山東省の店の前に長蛇の列ができたり、北京のスーパーマーケットで塩の陳列棚にほとんど商品がなかったりといった事態が起きています。スーパーの店員に聞くと、「塩はもうない!」「最近みんな塩を買い占めてる」と話しました。
今、中国では4トンが1時間で売り切れる店もあるほど、塩の買い占めが起きているといいます。
さらに、ネット上では根拠の分からない動画が上がっています。「北京青年報SNS」には太平洋を写した地図があり、福島第一原発付近から波のように赤や黄色が広がります。
これは“汚染水”の広がりを表しているといい、約240日後に中国沿岸に到達すると伝えています。この根拠は何なのか。動画の作成者側に質問を送りましたが、現時点で返事はありません。
中国で起きている混乱の理由は、24日に福島第一原発で始まった、海水で薄めた処理水の海への放出です。
福島県内の市場では処理水放出後、初めての競りが行われました。
福島・いわき市の沼ノ内漁港では「(競りの値段は)高いよ」という声も聞かれ、取引価格に大きな変化は見られませんでした。仲買人は「冷静に受け止めているからさ、『ああ良かったな』という気持ちもない」と胸の内を語りました。
「常磐もの」と呼ばれる福島の魚を扱う、東京・目黒区の鮮魚セレクトショップ「サカナバッカ中目黒」を訪ねました。並んでいたのは、福島県産の大きなヒラメです。
同店を運営する「フーディソン」の地方創生プロジェクト担当、山本久美恵さんは「我々のできる範囲で、検査済みであることをきちんとお伝えするなど、正しい知識をできる限りお伝えしていくという方針です」と話します。
来店した客は「基準をクリアしているという話だし、それを信じれば大丈夫だと思う」と話しました。
小池都知事も25日、都庁で福島県産のスズキや宮城県産のカツオ、ヒラメの刺し身などに舌鼓を打ちました。小池知事は「グッドです。フレッシュです」と笑顔を見せました。
■大分のハマチにも影響…懸念は
その一方、処理水放出の影響は全国に広がっています。福島第一原発から遠く離れた、大分県のハマチを扱う水産養殖会社は、中国に販売する話がなくなってしまったといいます。
浪井丸天水産・浪井大喜代表
「約2万匹を年内で販売する動きをしていたんですけども、それが出荷停止というか、できなくなりましたね。金額だと、2万匹なんで1億円ぐらいですかね」
中国への輸出が止まった分、国内への供給が増え、値崩れが起きるのではと心配しているといいます。
浪井代表は「しょうがないというか、反対にこれからどうやっていくかが重要だと思っていますね。日本の水産物はとにかくおいしいので、皆さんに食べてもらえたらいいなという思いですね」と話します。
■「加工品」の購入・使用も禁止に
中国・北京の日本料理店「東也」を訪ねました。
谷岡一幸オーナーはホタテを手に、「これはね、中国産。(今までは)日本から入ってきたホタテを使っていました」と言いました。既に、日本の魚や貝が入ってこない状態になっています。「残念な気持ちですよね。世界一の極上の素材が届かないと」
さらに、谷岡オーナーは「今後はもしかすると加工品だとか食品が手に入らなくなることをすごく心配しています」と言いました。
その心配は的中。中国政府は新たに、日本産の水産物の加工品の購入や使用を禁じるとした対抗措置を発表しました。
谷岡オーナー
「安全なんだなというのが証明されて、中国の方々が安心して召し上がれる時期がいつか来ると思うんですよ」
■海に変化は?…検出限界を下回る
実際に、海に変化は出たのでしょうか。25日、初めてとなるサンプリング調査の結果が東京電力の会見で明らかになりました。
処理水放出開始後、東京電力が原発から3キロ以内の海域10か所で海水を採取して分析。その結果、放射性物質の濃度は、検出できる限界よりも低かったということです。
(8月25日『news zero』より)