金正恩氏は現実的? 父の政権と変化も――ミサイル「失敗」認めたワケ 専門家「恥ではない」...狙いは中長期的な軍事力強化か
北朝鮮が、偵察衛星と称するミサイルの発射について失敗だったと即座に認めました。この背景には何があるのでしょうか。父の金正日政権とは体質が変わっているという指摘もあります。金正恩政権の性格や思考回路、今後の展開などを考えます。
有働由美子キャスター
「北朝鮮が(ミサイル発射について)失敗と即座に言ったので、特別に言わなくてはいけない理由もあるのかなと思いましたが...」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「この点、金正恩政権の性格を見極める上で非常に重要なポイントになります。北朝鮮情勢に詳しい慶応義塾大学の礒﨑敦仁教授は、『失敗は恥ではない』『失敗したら原因を究明して乗り越え、次につなげることが大切だ』という考え方をしていると指摘します」
有働キャスター
「一昔前は、北朝鮮は失敗しても明らかにしない、隠すというイメージがありました」
小栗委員
「礒﨑教授によると、亡くなった父の金正日政権とは体質が変わってきています。例えば金正日氏はできるだけ表に出ず、肉声は最高指導者になってからは公になっていませんでした。今の正恩氏は隠しません。出せるものは出す、というスタンスだそうです」
「そのため 2012 年に失敗した時にもそれを認めましたし、今回も失敗を認めた上で中長期的な視野で軍事力強化を図ろうとしているといいます」
「実際、今回北朝鮮は発射を通告する段階で『軍事偵察衛星の 1 号機』だと繰り返し言っています。たとえ今回成功していたとしても、精度を良くするために 2 号機、3 号機と発射を続けるつもりだったのだろう、と礒﨑教授は分析しています」
有働キャスター
「一方で、北朝鮮国内の一般の人たちの生活は大変ですが、そこは変えることはないのでしょうか?」
小栗委員
「礒﨑教授によるとそこが変わらない点で、人民生活の向上も無視はしないけれども、これを守るためにも今の国や体制を維持することが大切で、アメリカや韓国から攻撃を受けないように、核やミサイル、偵察衛星を持つのだという思考回路だそうです」
「北朝鮮国営の朝鮮中央通信は 6 月上旬に、政府や朝鮮労働党の方針を決める中央委員会総会が開かれると伝えています。礒﨑教授は『ここで今回の偵察衛星と称するものの打ち上げ失敗をどう総括するのか注目だ』と話していました」
有働キャスター
「このように金正恩総書記の意外と現実的な面が見えてくると、もしかして日朝首脳会談もあるのでしょうか?」
小栗委員
「北朝鮮が振り向いてほしいと考えているのは、あくまでアメリカです。日本としても、国連決議違反をしている北朝鮮と交渉できるかというと、そう簡単ではないと思います」
(5 月 31 日『news zero』より)