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スペースシャトル誕生にかかわる品、公開へ

2012年8月16日 15:56
スペースシャトル誕生にかかわる品、公開へ

 2011年、夏。その任務を終えて引退したスペースシャトル。その誕生に深く関わった、いわば「シャトルの原点」ともいえる品が今回、初めて一般に公開されることに決まった。そのもようを、ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が取材した。

 カリフォルニア州ロサンゼルス。7月中旬、古い倉庫から巨大な物体が運び出された。今から40年前、主に木とプラスチックで作られたスペースシャトルの実物大の模型だ。かつてこの場所にあった航空宇宙メーカーが、NASA(=アメリカ航空宇宙局)にスペースシャトルのデザインを提案するために作ったものだ。実際にデザインが採用されたため、この模型をもとに本物のスペースシャトルが製造された。人が入ることのできる操縦席には計器まで付いている。しかし、模型としての役目を終えると、その後ほとんど人目に触れることなく、倉庫の奥で眠っていたという。

 ところが、最近になって倉庫を取り壊し、ショッピングセンターを建設する計画が持ち上がった。このため、地元の自治体が模型を引き取り、近くの博物館で展示することを決めた。初めて建物の外に出された日、記念の式典が開かれた。設計にかかわった元技術者は、その式典でこうスピーチした。

 「この実物大模型は、スペースシャトルの最終デザインを決定するための最も重要な技術開発ツールでした」

 模型はだいぶほこりをかぶっていて、年月を感じさせる。翼の部分を見てみると、ペンキで塗装され、木でくみ上げられていることがわかる。式典に参加した市民らは「息を飲みますね」「素晴らしいです!ひとつの歴史ですね」「すてきだと思います。大きいですね」と、感動の声をあげていた。式典に招かれていた元技術者が、設計時の苦難をこう語ってくれた。

 「設計は大変でした。技術、素材、そして形状、挑戦の連続でした」

 30年にわたり宇宙開発をリードし、2011年の夏、その任務を終えたスペースシャトル。引退した機体は博物館で保存され、すでに展示が始まっているところもある。時を同じくして、初めて脚光を浴びることになった“模型の”スペースシャトル。実物と同じく、歴史を伝えるという第2の人生が始まろうとしている。元技術者は「(模型が公開されることは)歴史的にも貴重ですし、若い人に刺激になるでしょう」と、語る。この模型は2年後をめどに、近くの博物館で公開される予定だが、展示スペースの建設が終わるまで、しばらくは駐車場の巨大テントで仮置きされるという。