軍事クーデターから1年…タイの今
タイで軍がクーデターを起こして22日で1年たった。軍事政権は今も続いているが、民政化への道のりは依然、不透明。タイの今を今村健太郎記者が取材した。
タイの首都・バンコク、中心部の大通りは毎週日曜日、歩行者天国になる。タイでは長引く政治の混乱の末、去年5月に軍がクーデターを起こし、プラユット陸軍司令官が暫定首相に就任した。1年前のクーデター直前までは反政府デモの拠点だった場所。それが今では兵士が観光客との記念撮影に応じる姿も見られる。
タイでは観光業が国内総生産の1割を占めているが、タイ政府によると日本からタイを訪れた人は去年1年間で、前の年に比べ17%以上も減った。しかし今年1月以降は去年と比べて増加に転じている。
エイチ・アイ・エス タイ法人、関直樹さん「お客様が持つタイの負のイメージがだいぶ払拭(ふっしょく)されている」
一見、街は平穏を取り戻したようにも見えるが、一方で軍が今も町中で検問を行うなど監視が続くところもある。タイ東北部の農村部・ウドンタニ。タクシン元首相がバラマキに近い政策で貧困層に手厚い対策を講じたことから、ウドンタニとその周辺ではタクシン元首相の妹・インラック前首相の前政権を支持するデモが盛んに行われていた。しかし、今は…。
ウドンタニの住民「(Q:軍政について)ノーコメントです」「(Q:プラユット暫定首相はどう?)えっと…いいと思いますよ」
私たちはクーデター直前に取材したアノンさんを再び訪ねた。アノンさんはラジオ局の経営者で、前政権を支持する人々のリーダー格だった。しかし、軍はクーデター当日にアノンさんを逮捕、放送設備は破壊された。釈放後、アノンさんはラジオ局の隣の山でキノコ農場を始めた。
アノンさん「生きていくためには金を稼がないといけない」
この1年の間に、アノンさんは軍から誓約書を提出させられていた。「5人以上の集会をしない」「政治的な発言をしない」などの約束をすることとなり、守っているかを監視されることになったのだ。
アノンさん「キノコ農家になっても軍は信用しない」
プラユット暫定首相は就任直後、今年中に憲法を制定し、総選挙をするとしていた。しかし、憲法は草案ができたばかりで、民政移管の前提となる総選挙も来年以降にずれこむのは避けられない情勢。
タイでは今、目立った混乱は見られないものの、クーデターから1年となった22日は首都・バンコクでも軍政への抗議活動が散発的に行われた。軍政が続くことへの懸念は続き、不満を持つ人が増えれば政治の混乱が再燃するおそれもある。