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アフリカから欧州へ 移民たちの暮らしは…

2015年5月29日 17:07
アフリカから欧州へ 移民たちの暮らしは…

 いま、多くの地域で内戦や紛争が行われているアフリカから、地中海を渡ってヨーロッパを目指す移民が急増している。海を渡った移民には何が待っているのだろうか。小島康裕記者が取材した。

 体育館のような大きな施設。そこで出会った人々の顔に浮かんでいたのは疲れと、とりあえず絶望を逃れた安堵の表情だった。地中海を渡り、ヨーロッパを目指す移民たち。その数は今年すでに6万人を超えた。途中で命を落とす移民も1800人を超え、先月には一度に800人以上が犠牲となる事故も起きている。

 私たちが訪れたのは、イタリア半島の南に浮かぶシチリア島。その南端のポッツァッロ市。アフリカからは約450キロ、船で丸2日の距離だという。現在は沖合いで当局が船を捕捉し移民たちを運んでくる。到着した移民が、最初に一時的に保護される施設。私たちはその内部の取材を特別に許された。180床あるベッドが、足りないことも多いという。取材の1週間前に、600人が一挙に収容され、この日は、そのうちの25人がまだ残されていた。国籍はエジプト、モロッコ、バングラデシュなど様々だ。移民たちからは

 エリトリア人「私の国には自由も何もありません」

 モロッコ人「私の国、モロッコでは仕事がないので、仕事を求めてきました」「ブローカーに、3000ユーロ(約40万円)払いました」

 という声が聞かれた。

 ここでは衣服など基本的なものが支給され食事も与えられる。費用はイタリアが負担している。取材時、EU(=ヨーロッパ連合)の国境管理の担当官がバングラデシュから渡航してきた人に事情聴取をしていた。捜査の一環としてブローカーの情報などを聞き出しているということだ。EUは危険な航海を手引きするブローカーの摘発に力を入れている。船にテロリストが紛れ込む可能性も指摘されているのだ。

 エリトリアから来たという少年が、この日、退所するということで最後の診察を受けていた。必要な手続きを終えると、移民たちは長期滞在施設に移り、難民として認定されるのを待つ。施設から施設へと送りこむことで膨大な数の移民を収容している。

 ポッツァッロ市の近郊にある移民の長期滞在施設。半年前にイタリアに到着したナイジェリア人が身を寄せていた。難民認定が出るまで最長1年、ここで暮らすことができる。生活費はイタリアが負担する。ここでの生活に慣れてきたか聞いてみると…

 ナイジェリアからの移民の女性「ええ、慣れてきました。とてもいい所です」

 夫は警察官をしていたが、地域の紛争に巻き込まれリビアに逃げ込んだ。しかし、そこも治安が悪化。妻は妊娠しており平穏を求めて海を渡った。

 ナイジェリアからの移民の男性「とてもつらい経験でした。助かったのは神様のおかげです」

 施設ではイタリア語を教えてくれ、外出も自由だ。ここでヨーロッパで生きていくための基礎を身につける。

 ナイジェリアからの移民の男性「イタリアには『ありがとう』と言いたい。私の未来を開いてくれたから」

 早く仕事を見つけて自分の足で歩きたい。そう語った。

 しかし、イタリアも失業率が高い状態が続くなど余裕はない。ヨーロッパ全体として、彼らをどう受け入れるか検討は始まったばかりだ。

 1週間前に到着したエリトリア人の少年少女が長期滞在施設に移ることになった。ともに地中海を渡った国籍も民族も違う、つかの間の同志たち。おそらく二度と会うことはないだろう。

 去年1年間に、地中海を越えてヨーロッパにたどりついた移民は20万人以上。今年はそれを超えると予想されている。彼らをどう支えたらよいのか。答えは簡単に出そうにない。