右傾化するヨーロッパ 今後は?
5年に1度行われるEU=ヨーロッパ連合の議会選挙でEUに懐疑的な『右派勢力』が、議席を増やす見通しとなった。ヨーロッパでは各地で「自国第一主義」「反移民・難民」「反気候変動政策」などを掲げる右派勢力の拡大が顕著になっている。既にイタリア、スウェーデン、フィンランド、ハンガリーで右派が政権に参加。また、フランスやドイツ、ベルギーなどでも右派への支持が高まっている。
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■右傾化するヨーロッパ
5年に1度行われるEU=ヨーロッパ連合の議会選挙でEUに懐疑的な『右派勢力』が、議席を増やす見通しとなった。ヨーロッパでは各地で「自国第一主義」「反移民・難民」「反気候変動政策」などを掲げる右派勢力の拡大が顕著になっている。既にイタリア、スウェーデン、フィンランド、ハンガリーで右派が政権に参加。また、フランスやドイツ、ベルギーなどでも右派への支持が高まっている。
■激震走るフランス
今回、激震が走ったのがフランス。マクロン大統領率いる与党が、極右政党「国民連合」に、獲得議席で倍以上の差をつけ歴史的大敗をする見通しとなったのだ。マクロン大統領は、「国粋主義の台頭は危険だ」と訴えた上で、「何事もなかったことにはできない」と、議会下院にあたる国民議会の解散を決定。オリンピック直前の6月30日と7月7日に総選挙が行われることになった。極右の躍進を阻止するべくマクロン大統領が大きな賭けに出た形だが、フランスは政治的混乱に陥る可能性が高いとみられている。
■ヨーロッパで何が?
今、なぜヨーロッパで右派が躍進しているのか?
背景にあるのはエネルギーや食糧価格の高騰による、市民生活の困窮。それに追い打ちをかけるように急増した移民・難民だ。過去10年あまり300~400万人台で推移してきたEU加盟国への難民・移民は、2022年、698万人に急増。ウクライナ避難民のほか、アフリカや中東などからの移民・難民もヨーロッパに殺到しているのだ。
移民・難民が更なる財政負担や治安の悪化をもたらすと警戒感が広がる中、右派勢力は、「移民・難民受け入れ厳格化」のほか、国民の負担増につながる「気候変動対策」の大幅なスローダウンなど自国民を優先する政策を掲げ、勢力を拡大しているのだ。
■今後何が?
2024年はヨーロッパ各地でも選挙が行われる。
欧州議会選挙に加えベルギー(6月)や、フランス(6・7月)、オーストリア(9月)で総選挙が行われるほか、ドイツでも一部の州で9月に議会選挙が予定されている。
ヨーロッパ政治に詳しい早稲田大学国際教養学部の片岡貞治教授は「ヨーロッパ全体で移民問題が大変デリケートな問題となっており、右派の台頭は仕方がないといえる。今後もこの傾向は続くだろう。EUの移民政策や気候変動政策への影響は大きい」と話す。
またヨーロッパ経済に詳しい第一生命経済研究所 田中 理・首席エコノミストは「フランスの総選挙で極右政党が第一党になる可能性は高い。ヨーロッパの中心国が極右となると影響は大きく、EUの屋台骨がゆらぎかねない」と話している。
ヨーロッパで進む右傾化によりEUの移民規制の厳格化や、気候変動政策の大幅なペースダウンが懸念される。