台湾が実効支配する最前線の島…中国の圧力強まる 新総統就任で今後の対中関係は?
台湾では20日、与党・民進党の頼清徳氏が総統に就任しました。こうした中、台湾が実効支配する、中国との最前線の島では、中国による挑発が相次いでいます。
18日、取材班は台湾と中国、最前線の海へ向かいました。
NNN金門 渡辺容代記者
「いま金門島から出発して20分ほどたった場所なんですけれども、台湾周辺、船の重要なルートになっていて、多くの船が航行しているのが確認できます」
台湾が実効支配する金門島。対岸の中国までは、近いところでわずか2キロ。この島の周辺で最近、これまでにはなかったレベルで中国による挑発が相次いでいます。
中国海警局(9日)
「この海域で演習を行う。関係のない船は離れなさい」
5月9日には、11隻もの中国船が接近し、これ見よがしに演習を行いました。また、台湾の遊覧船に乗り込んで検査を行うなど、対応をエスカレートさせているのです。
取材中にも…
乗組員
「中国の船だ」
目の前に、中国のものとみられる漁船が現れました。台湾が管轄する水域で、違法に漁を行っているのか。取材班が近づき、声をかけました。
――あなたたちは中国の漁民ですか?
記者
「いま、帰れというふうに手を振られましたね。こちら台湾が管轄する水域なんですが、離れようとしないですね」
私たちは現場を離れ、海上保安庁にあたる台湾海巡署に経緯を通報。台湾の巡視船が現場に急行し、捜索に向かいました。
さらに、金門島周辺では中国のものとみられるドローンが飛来し、島に駐留する台湾軍の兵士らを撮影。海からも空からも、中国が圧力を強めています。
金門島に住む人々は…
金門島の住民
「こういう嫌がらせはよくある」
「(中台関係で)より緊張が高まる」
こうした中、20日に就任した頼清徳総統。
頼清徳総統(台湾・台北 20日)
「中華民国と中華人民共和国は、互いに隷属していない」
就任演説で、日本やアメリカと協力して中国に対抗する考えを強調しました。
一方、中国の習近平政権は圧力だけでなく、“アメ”もちらつかせています。4月に中国を訪問した台湾の野党政治家・馬英九元総統に、習近平主席自ら面会して歓待しました。
この会談に同席していた大学院生に、話を聞きました。
大学院生 許嘉芸さん
「私がここに座っていて、馬英九氏は私の右前にいました。馬氏の真向かいは習近平氏です」
間近に見た習主席に、親近感がわいたといいます。
大学院生 許嘉芸さん
「(習主席は)うれしそうだった。表情がはっきり見えて、学生たちが発言した時も笑っていた」
野党議員の事務所でインターンをしている許さん。さらに、頼・新総統の中国に対する姿勢を批判しました。
大学院生 許嘉芸さん
「(頼総統は)中国ともっと交流すべき。台湾独立のような、対立をあおるような話はやめてほしい」
さまざまな手段を使って揺さぶりを強める中国に、新しい総統はどう向き合うのでしょうか。