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先行き“不透明”…問われる国連の存在意義

2017年1月3日 23:20
先行き“不透明”…問われる国連の存在意義

 2017年、国連は先行き“不透明”な年を迎える。年末で2期10年の任期を終え退任した潘基文事務総長にかわり、1月から元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス氏が事務総長に就任する。

 国連難民高等弁務官をつとめたグレーレス氏は就任会見で、「国連の改革」を強く訴えた。国連が機能するために「迅速性、柔軟な対応が必要だ」と指摘したグテーレス氏。最大の課題といわれる難民・移民問題への対応に期待が高まっている。

 ある国連関係者は、「潘基文事務総長は、地球温暖化対策などで一定の成果はあったが、難民問題では指導力を発揮できなかった」と指摘した上で、「グテーレス氏の手腕は難民問題にどう取り組むかでまずは評価されるだろう」と話す。

 また、潘基文氏は退任の記者会見で、「シリア政策は失敗だった。首都アレッポは地獄だ」などと、内戦が続くシリア問題への一連の対応が不十分だったことを認めた。

 ある外務省関係者は、「シリア問題で国連は機能不全に陥っている。最も国連の力が必要な人たちに対して何もできていない」と指摘している。

 また、安保理では、何度もアメリカとロシアが激しく対立する場面も目立ったが、ある国連関係者は、「グテーレス新事務総長が指導力を発揮し、ロシア、アメリカの間に入り調整できるかが焦点だろう」と期待感を寄せている。

 そして、国連にとって最大の「不透明」さは、アメリカのトランプ政権の出方だ。トランプ氏は選挙中、地球温暖化対策で国連のもとで合意したパリ協定から離脱する意向を示すなど、国連と「距離」を置くことも示唆。アメリカが国際社会で「多国間協調主義」から「一国主義」にシフトチェンジすることへの懸念が高まっている。

 国連でアメリカは、予算を最も多く分担するなど、中心的な役割を占めていて、「アメリカの協力なしで国連は機能しない」と指摘されている。ある国連職員は、「国連本部では毎日トランプ政権の話題ばかりだ。アメリカの態度次第で国連の存在意義が根本から問われる年になりかねない。最大の不透明要素だ」と警戒感を高めている。

 また、日本も先が見えない「不透明」な問題に直面している。ある国連日本代表部の関係者は、「去年は北朝鮮に振り回された1年だった。今年は北朝鮮の出方がさらに読めない年になるだろう」と話している。

 去年1月に核実験を行い、その後も弾道ミサイルの発射を繰り返し行った北朝鮮。国連安保理では、非常任理事国である日本に加え、アメリカ・韓国が主導する形で、3月には「国連史上最も厳しい経済制裁措置」を盛り込んだ決議を採択した。

 国連として「圧力」を強めたにもかかわらず、北朝鮮の挑発行為は止まらず、9月には2度目の核実験を強行。日本の別所浩郎大使は年末に行われた会見で「北朝鮮の情勢は、新たな展開をしている」と指摘している一方、他の国連関係者は「国連は北朝鮮が挑発行為を行うたびに非難声明や制裁措置で対応してきたが、これ以上の挑発行為に出てきた場合どう対応するのか、オプションが狭まってきている」と、対応の難しさを吐露している。

 今後の対応について別所大使は、「アメリカの新政権と協力して、日米韓で連携して一歩でもよい方向に進むように努力したい」と述べる一方で、外務省関係者からは、「これ以上国連のメッセージが無視され続ければ何のための国連だと思う人が増えるだろう」と指摘している。

 国連として新しいトップが誕生する今年、先行き不透明な課題にどう対応していくのか、「存在意義」が問われる年となる。