「水も食料も薬もない…」多くの命奪われた1か月 ロシア人ジャーナリストも反戦訴える
ウクライナのゼレンスキー大統領は、23日午後6時から、国会でオンライン中継による演説に臨みました。こうした中、ロシア国内では、国営放送の元キャスターが戦争に抗議し辞職するなど、反戦を訴えました。
◇
ウクライナ東部・ドネツクで22日に撮影された映像には、砲撃を受け、がれきと化した建物が映っていました。
ウクライナ兵士
「最後にここにいた時の街の姿と比べると、半分しか残っていません。街の半分ぐらいが燃やされ破壊された」
わずか1か月で、多くの街が変わり果て、「涙がでるほど悔しいです。これは… 言葉がでません」と、目を潤ませる男性の姿もありました。
24日で1か月となる、ロシアのウクライナへの侵攻。激戦地のマリウポリでは、民間人の犠牲が3000人を超えています。
そのマリウポリについて、ゼレンスキー大統領は自身のSNSで、「いまマリウポリでは、約10万人が非人道的な状況下にあり、完全に閉じ込められている。水も食料も薬もなく、常に砲撃を受けている」と訴えました。
アメリカの国防総省の高官は、「ロシア軍はマリウポリに対し、海上の戦艦からも砲撃している」と分析し、一方で、ロシアが制圧した一部の地域を、ウクライナが奪還しようとしている動きもあるとしました。
こうした激しい抵抗により、ロシア軍は戦力の10%以上を失った可能性があるということです。
砲撃を受け、泣きながら逃げる女性。その横で、ウクライナ兵が幼い子供を抱きかかえている写真が撮影されました。この写真を激戦地・イルピンで撮影したのは、ウクライナ人写真家のドンデュクさんです。
ウクライナ人写真家 ドンデュクさん
「女性は夫と離ればなれになり、泣いていました」
戦地の惨状を伝える1枚は、アメリカ・タイム誌の表紙にもなりました。
キエフの病院でベッドに横たわるのは、家族で、車で移動中に砲撃を受けた6歳の少年。撮影の翌日に息を引き取り、家族も亡くなったといいます。
ドンデュクさん
「できる限り、世界にウクライナでの戦争の本当の姿を見せたい」
◇
ウクライナ侵攻に抗議する、ロシア人ジャーナリストもいます。
「(第1チャンネルを)私が辞めるのは、戦争が始まったからです」と話すのは、ロシア国営テレビの「第1チャンネル」で、ニュースキャスターなどを務めたジャンナ・アガラコワさん。
プーチン政権の意向に沿った放送を続ける「第1チャンネル」では、「戦争を止めてください! 戦争反対!」と生放送中に職員が反戦を訴え、話題となりました。
ジャンナさん
「ニュースでは、たった1人の話しか流れない事態に陥っています」
「プロパガンダには加担できない」などと、戦争に抗議して辞職したということです。
プーチン政権に対し批判的な報道を続けてきた、ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長。去年、ノーベル平和賞を受賞したムラトフ氏は22日、ノーベル賞のメダルを競売にかけ、売り上げをウクライナ避難民を支援する基金に寄付すると発表しました。
多くの命が奪われた1か月。停戦協議についてゼレンスキー大統領は、「非常に困難で対立もあるが、一歩ずつ前進している」としています。