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ロヒンギャ難民を苦しめる“サイクロン”被害 WFPバングラデシュ代表が支援訴え「再び直撃なら深刻な事態に」

2023年6月3日 11:01
ロヒンギャ難民を苦しめる“サイクロン”被害 WFPバングラデシュ代表が支援訴え「再び直撃なら深刻な事態に」
ロヒンギャの子どもたち(提供:国連WFP)

大型のサイクロンが5月中旬、ミャンマーとバングラデシュを直撃し、少数派イスラム教徒のロヒンギャが身を寄せる難民キャンプでは多くの難民が住まいを失った。WFP(世界食糧計画)バングラデシュ事務所代表のドム・スカルペリ氏が5月末、都内で日本テレビのインタビューに応じ、「サイクロンの季節は始まったばかりだ」として支援の必要性を訴えた。


――ロヒンギャ難民キャンプでは、サイクロンによりどのような被害が出たのでしょうか。
(注:ロヒンギャ=ミャンマーのイスラム系少数民族。ミャンマー軍などの迫害から逃れてきた約100万人が、バングラデシュの難民キャンプで暮らしている)

2週間ほど前(5月中旬)、ミャンマーとバングラデシュを大型サイクロンが襲いました。サイクロンはバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプにも大きな被害をもたらし、数万もの住居を破壊しました。

国連は先日、バングラデシュにおけるサイクロン対応で約4000万ドルの支援を呼びかけましたが、そのほとんどは住居再建の費用になります。サイクロンの季節は始まったばかりなので、再び大型サイクロンが直撃するようなことがあれば、非常に深刻な事態となります。

ロヒンギャ難民は通常、竹やビニールシートでできた簡易的なシェルターで暮らしています。こうしたシェルターはサイクロンの被害を受けやすいだけでなく、火災が発生する危険性も非常に高まります。キャンプでは毎年200件以上の火災が発生し、多くの人が住まいを失っています。

サイクロンや火事、さらに食料配給の削減も重なり、次から次へと衝撃が襲ってくるようです。ロヒンギャの人々は常に大きな苦しみにさいなまれています。

――サイクロンの被害が拡大する中、なぜ食料配給が削減されたのでしょうか。

国際社会による支援がウクライナに集中しているため、世界各地で展開中のWFPの活動においても、資金不足で配給削減を余儀なくされています。WFPは以前はロヒンギャ難民1人あたり「月12ドル」を支給していましたが、3月には1人あたり「月10ドル」に削減、6月からは1人あたり「月8ドル」に削減されます。1食あたりは約13円となりますが、これだけでは卵半分も買えません。

ロヒンギャの人々は、家族や子どもたちのために料理を作ることができるか、十分な食料がない状態でどうやって月末まで過ごすことができるか、とても心配しています。食料配給を削減する前からキャンプ内の栄養不良は深刻で、ほとんど緊急事態のレベルでした。今回の削減により、状況はさらに悪化するでしょう。

難民キャンプで暮らす約100万人の半分は子どもですが、食事量が少なければ免疫力が低下し、病気になる可能性も高まります。しかし、医療機関も資金不足に悩まされているので、さらに大きな危機へと転がり落ちてしまう可能性もあります。

――近年、キャンプ内では教育環境の整備が進んできた一方、治安悪化が指摘されてきました。バングラデシュ政府やユニセフ(国連児童基金)の尽力により、就学児童がキャンプ内の学習センターでミャンマーのカリキュラムを学べるようになりました。これにより、ミャンマーに帰国した際には、すぐに学習を再開することができます。

またWFPでは、学習センターで給食やおやつを提供しています。これは保護者に対して、子どもを学習センターに通わせる動機をつくるためです。家族全体の食料が減っている中では、子どもたちを学校に行かせず労働させるという誘惑に駆られるかもしれませんから。子どもたちを学校に通わせるためのこうした工夫は、非常に重要です。

一方、人々が常に飢えているような状況では、治安悪化のリスクも高まります。難民の若者たちが、キャンプから出ることを許されず、働くことも許されず、食料配給に完全に依存し、妻や娘たちと食卓を囲むこともできないのです。

困窮した難民がネガティブな手段に訴えるというリスクもあります。命がけでボートでバングラデシュを離れ、人身売買や麻薬取引に巻き込まれるかもしれないのです。だからこそ、私たちは国際社会に対して、支援の必要性を訴え続けなければなりません。

――日本社会へのメッセージをお願いします。

日本社会はこれまでWFPを通じて、ロヒンギャコミュニティに多大なる支援を行ってくれました。日本の皆さんのあたたかいご支援に感謝します。その上で、日本が他の国々にも支援を継続するよう働きかけることができれば、それは非常に強いメッセージになるのではないでしょうか。日本は世界中で非常に尊敬されているのですから。