「民間人被害はウソ」ロシアが“子供向け動画”で主張 情報戦も激化
侵攻が続くウクライナでは、ロシアの攻撃が激しさを増していて、首都キエフでは外出禁止令が出されるなど、緊張が高まっています。
一方、ロシアとウクライナ、それぞれが動画を公開するなど情報戦も激しくなっています。ロシアの教育省は、幼い女の子の疑問を大人が答える形式の子供向け動画を公開しました。プーチン政権の主張を浸透させる狙いがあるとみられています。
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外出禁止令が出ているウクライナの首都・キエフでは16日、集合住宅から火が上がっていました。
ウクライナ当局によると、早朝に砲撃があり住宅の一部が崩落。少なくとも2人がけがをし、16日も救助活動が続けられているということです。
そして、ロシアとウクライナ、それぞれが動画を公開するなど情報戦も激しくなっています。
15日、キエフで、空爆を受けた住宅から煙が上がる中、ボクシングの元WBCヘビー級チャンピオンで、現在はキエフ市の市長を務めるクリチコ氏が現場を訪れました。
キエフ市クリチコ市長
「私たちは街を守る、ここは私たちの家だ」
キエフを守る決意を語るとともに、避難を希望する住民には速やかに街を出るよう呼びかけました。
キエフ市クリチコ市長
「ウクライナ西部に避難したい人は、すぐに手配します」
長距離砲撃などの攻撃を受けているキエフ。
アメリカのシンクタンクは、14日~15日にかけてロシア軍がキエフ西部で行った攻撃は、キエフ包囲を試みるロシア軍の、現時点の最大規模の作戦だったと分析しています。
キエフでは日本時間の16日、午前3時から35時間の「外出禁止令」が出され、緊張が高まっています。
そのキエフには15日、チェコ、ポーランド、スロベニアの首相が到着し、ゼレンスキー大統領と会談しました。ロシアによる侵攻後、外国の首脳がキエフを訪問したのは初めてのことです。
チェコ・フィアラ首相
「あなたたちはひとりではない。ヨーロッパはあなたたちの味方です」
EU(=ヨーロッパ連合)の代表として現地を訪れ結束を確認しました。
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その一方、ロシア側は国内からほころびが出ています。
マリーナ・オフシャンニコワさん
「2日間まったく寝られず、14時間以上の尋問が続きました」
こう話すのはロシア国営テレビ「第1チャンネル」で働くマリーナ・オフシャンニコワさん。オフシャンニコワさんは14日、ニュース番組の生放送中に反戦を訴え、ロシア当局に拘束されました。
プーチン政権の言論統制が強まるなかでのこの行動。実はこの前にも、SNSに動画を投稿していたのです。
マリーナ・オフシャンニコワさん
「いまウクライナで起きていることは犯罪で、ロシアは侵略国である。その侵略の責任はプーチンにある」
この投稿がデモへの参加を呼び掛けた罪に問われ、約3万円の罰金が科されたということです。
マリーナ・オフシャンニコワさん
「私自身の反戦の意思です。ロシアの軍事侵攻は受け入れられないし、とても恐ろしかったです」
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ウクライナの内務省は、5人が会見に臨む映像を公開しました。ウクライナ側は、彼らについて、捕虜となったロシア軍の兵士だと説明しています。
ロシア軍兵士とされる男性
「ロシアの皆さんに、特に兵士の親にいいたいことがあります。子供たちをウクライナに行かせないでください。ここで戦争するのはまったく意味のないことです」
ウクライナで戦闘に参加することは知らされてなく、だまされたなどと語りました。そしてプーチン大統領については――
男性
「すべてを終わらせてください。早く終わりにしましょう。だまされて来たロシアの軍人は、全員帰国させるよう命令を出してください」
一方、ロシアの教育省が制作した子供向けの動画が、3日に公開されました。
司会者
「なぜ、ウクライナの話をするんだと思う?」
女の子
「今のところ、よくわかりません」
幼い女の子の疑問を、大人が答えていくこの動画。いま戦っているウクライナをテーマに話が進んでいきます。
司会者
「ロシア軍が標的としているのは、軍事施設だけです。住民には1人たりとも触れていません」
ウクライナの民間人への被害は「ウソの情報」だと説明。
男性司会者
「ウソの情報は、本当にたくさんあります。SNSに何らかの情報を投稿する前には、必ずその情報源の真偽を確かめないといけません」
動画は、プーチン政権の主張を浸透させる狙いがあるとみられています。
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こうした中14日と15日、2日連続で行われた4回目の停戦協議。ウクライナ側は食い違いが残るものの妥協の余地はあるとしています。
ゼレンスキー大統領
「交渉はより現実的になっていると報告を受けているが、ウクライナの国益につながる決定には、まだ時間が必要だ」
一方、ロシアメディアによると16日、ラブロフ外相は「交渉はうまくいっていない」としたうえで「容易ではないが妥協への希望はある」と述べたということです。
地元当局によると、ウクライナ第2の都市ハリコフでは、16日までに500人以上の民間人の死亡が確認されています。また、検察当局によると、ロシアによる侵攻以降、国内で103人の子供が命を落としたということです。
民間人の犠牲も増える中、16日も引き続き行われる予定の、停戦協議での進展が求められています。