ロシア大統領選 “圧勝”狙うプーチン氏が「反戦候補」封じる? 対抗馬は「票は奪わない」…侵攻支持ばかり【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「プーチン氏 反戦候補封じる?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●「侵攻反対」10万人署名も…
●選挙管理委員会とズブズブ?
■プーチン氏「侵攻を止める考えない」
「3月15日から行われるのが、ロシアの大統領選挙です。プーチン大統領と戦う立候補予定者が芽を摘まれるという事態になっています」
「プーチン大統領といえば、ウクライナ侵攻への意欲は変わりません」
「8日に公開された、アメリカのジャーナリスト、タッカー・カールソンさんのインタビューに応えた映像では『アメリカなどが武器供与をやめれば、数週間で戦争は終わるだろう』と言いました。自分たちから侵攻を止める考えはないと話しました」
鈴江奈々アナウンサー
「プーチン大統領からすると、3月に大統領選を控えていますから、ウクライナ侵攻の正当性や成果もアピールしたいタイミングではありますよね」
■大統領選の顔ぶれは? 語らぬ候補も
小野解説委員
「まだプーチン大統領にとってみれば目的は達成できていないという段階ですから、大統領選挙が大事になります。大統領選の構図を見ていきます。プーチン大統領は再選を狙い、対抗馬は野党から3人出ています」
「ロシア自由民主党のスルツキーさんも、「新しい人々」のダバンコフさんも、ロシア共産党のハリトノフさんもウクライナへの軍事作戦を支持。スルツキーさんは『プーチンさんの票は奪いません』と言い、ダバンコフさんは選挙なのにほとんど何も語っていません」
辻岡義堂アナウンサー
「野党ですが、プーチン大統領にあまり勝つ気はないというか、戦う気もないというか…」
小野解説委員
「正面から戦って政党をつぶされたくないと思っています。つぶされずにうまく自らの政策を実現できれば、くらいに考えているのではないでしょうか」
「そして、ウクライナ侵攻に反対している『市民イニシアチブ』のナジェージュジンさんと無所属(ジャーナリスト)のドゥンツォワさんの2人は立候補が認められないという事態になりました」
「つまり、プーチン大統領は自らを支持してウクライナ侵攻を容認する候補と戦うという構図になります。『戦う』と言いましたが、一見普通に選挙をして国民は投票できますが、民主主義の形になっているかというと、何か違うなと」
■支持を広げたナジェージュジンさん
市來玲奈アナウンサー
「ウクライナ侵攻をする前提、侵攻ありきの選挙ということですよね」
小野解説委員
「だから、侵攻に反対する 2 人が立候補を認められなかったのはなぜだろうか。ここに着目したいです」
「ドゥンツォワさんは反戦を掲げるジャーナリストです。立候補を届け出たものの、選挙管理委員会に立候補を却下されました。理由は書類の不備でした」
「ナジェージュジンさんも『プーチンは間違いを犯した』『ウクライナ侵攻は誤りだ』と言ってきた人物です。この方への支持は広がっています」
「1月28日にモスクワで開かれた、ナジェージュジンさんの集会。大統領に担ごうと、約250人が集まりました。侵攻反対を掲げているだけにこの集会自体、秘密の集会でした」
「ナジェージュジンさんはこの時、『人が死ぬのは良くない。戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。(戦争を)終わらせるのが私の大統領1期目の課題だ』と語りました」
「参加者からは『戦争には反対。私は外交と交渉を望む』『私は同じ考えを持つ人とともにいたい。ここにいる人たちとは、ほぼ同じ考え(反戦)を持っていると思う』といった声が聞かれました」
■ネット調査では支持率30%超の人気
小野解説委員
「1月には、署名活動のために長い列ができました。ナジェージュジンさんが出馬するためには10万人分の署名が必要で、大勢が署名に訪れました。実際に署名は 10万人を超えたと、ナジェージュジンさんの陣営も発表しました」
忽滑谷こころアナウンサー
「これだけ(ロシア)国内にも反戦を求める人たちがいるということですよね」
小野解説委員
「そういうことです。あるインターネット調査での支持率は約32%。なかなかの数です」
辻岡アナウンサー
「それなのに、立候補できなかったんですよね?」
小野解説委員
「選挙管理委員会が『署名は無効だ』と言いました。署名の中に、既に亡くなっている人の名前があるなど不備があったといいます。こればかりは私たちには分かりませんが…」
「ナジェージュジンさんは会見で、『私を選挙から排除することはできるが、変化を求め、国の方針に同意しない何千万もの人々をどうするつもりか』と言いました」
■プーチン氏の目標得票率は80%か
鈴江アナウンサー
「本当にそうですよね。こういった方たちは勇気を出して声を上げようとしているところだと思います。一方で、民主主義を支える選挙が機能しない恐れもあるということで、なぜそんなことになってしまうのでしょう?」
小野解説委員
「そこで選挙管理委員会とズブズブなのか、というポイントを考えます。プーチン大統領はこの選挙で圧勝したい、徹底的に勝ちたい。ウクライナ侵攻の前、前回2018年の選挙ではプーチン大統領の得票率は約 77%でした」
「それが今回、ウクライナ侵攻後初めての大統領選挙です。もし得票率が下がると、戦争が支持されていないことになります。だから77%より多い、がっつりした票を取りたい。(得票率)80%は欲しいのではないかとみられています」
「ただネットの調査を見ると、ナジェージュジンさんの人気は30%を超えています。もしこの数字がそのまま得票率になると、100%-30%で70%となり、プーチン大統領の目標の80%に届きません」
「そして、ロシア国内で反戦を訴える候補者に署名する人が何万人もいると。プーチン大統領は当然、警戒します」
■専門家「プーチン政権の常とう手段」
辻岡アナウンサー
「となると、プーチン大統領と選挙管理委員会の関係性も何か疑わしくなってきますよね。裏があるんじゃないのかなと」
小野解説委員
「そこを疑いたくなりますが、防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、『プーチン政権の常とう手段だ』と指摘します」
「兵頭さんは『表向き、反戦だからとの理由で立候補を認めないわけにはいかないので、選挙管理委員会を使って書類不備を理由に立候補させないようにしているのではないか。プーチン政権は、公正中立なはずの選挙管理委員会と密接な関係がある』とみています」
■プーチン氏から勲章を与えられた委員長
小野解説委員
「去年11月の映像では、選挙管理委員会の委員長が、プーチン大統領からメダルと花束を受け取っています。プーチン大統領から仕事内容を褒めたたえられ、勲章が与えられました」
「兵頭さんは、『選挙管理委員会と密接な関係があれば、選挙結果がプーチン大統領の思うように調整される恐れさえあり得る』と言います」
■反戦機運とウクライナ侵攻への影響は?
市來アナウンサー
「改めてこういうことがあるんだと聞くとちょっと衝撃的ですけども、今回の選挙も含めて、ウクライナ侵攻にどういった影響があるのかなと気になりますね」
小野解説委員
「兵頭さんは『潜在的な反戦機運が高まってはいるが、力で抑えつけるので表立った動きにはならないだろう。ただ、長期化した場合は反戦の機運が拡大していく可能性があり、それをプーチン大統領はかなり警戒している』と話します」
鈴江アナウンサー
「力でどこまで抑え込むことができるのかというのは、はたから見ている私たちでも疑問ですよね。プーチン政権を維持するために黙殺される声があったり、多くの犠牲が生まれてしまったりしている状況については本当に恐ろしいなと感じます」
「ただ、海の外からですが私たちが見ている中で、今もナジェージュジンさんの周りには支持する声があって、黙殺されてしまうかもしれませんが、そういった反戦の声もあるという事実があること、注視していきたいなと思います」
小野解説委員
「反戦だと声を上げるだけでも当局からにらまれてしまう、圧力がかかるかもしれない。そういう中で、このように声を上げる人たちがいるということですからね。3月のロシアの大統領選挙、注意深く見ていると『え?』と思うようなことがまたあるかもしれません」
(2024年2月9日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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