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5人のパパで育休5回のアイスランド大統領に聞くジェンダー平等「日本にできないはずはない」

2023年1月29日 10:00
5人のパパで育休5回のアイスランド大統領に聞くジェンダー平等「日本にできないはずはない」

各国の男女格差を比較する「ジェンダーギャップ指数」で13年連続1位のアイスランド。グズニ・ヨハネソン大統領(54)は、5回の育休を取得した父親でもある。ジェンダー平等“世界一”のアイスランドも以前は男性優位な社会だったという。どのようにして男女平等は実現したのか。ジェンダーギャップ指数で146か国中116位と低迷する日本が変わるために必要なこととは――。『news every.』の鈴江奈々キャスターが単独インタビューした。

■ジェンダー平等は社会全体に恩恵

――男女平等が世界一進むアイスランドから学ばせていただきたいと思います。

男女平等は経済的な面でも賢明です。誰もが公平にチャンスを与えられ、誰もが平等に自分の能力を発揮し、夢を実現できる社会であれば、社会全体が恩恵を受けるのです。つまり、男女平等とは、女性にとっての正義や公正だけではありません。男女平等の社会であればあるほど、より豊かで、より幸福になれる可能性が高いのです。

私は日本に招かれました。アイスランドの経験について喜んで見識をお伝えします。男女平等に関して最も成功した国になったとはいえ、アイスランドにはまだやるべきことがあります。家庭内暴力や性的暴力の問題があり、女性が主に被害者となっている。改善していかなければなりません。しかし、私たちは正しい方向に進んでいます。そして日本の皆さんにも、私たちと一緒に正しい方向へ進んでほしいと願っています。

――今はジェンダー平等トップのアイスランドですが、昔は違ったのでしょうか?

アイスランドは、40~50年前、私が育った頃は男性社会でした。女性が権力や権威を持つことは非常に稀なことでしたが、今の私たちを見てください。私が生きている間に、私たちは変わったのです。物事がいかに早く正しい方向に進み、変化することができるかという一例だと思います。

日本の若い女性が社会で平等な権利を持っていることを理解し、若い男性もそれが自分の利益であることを理解するようになれば、社会の誰もが自分の能力を発揮するチャンスを平等に持つことができるでしょう。日本の人々は正しい方向へ進みたいのだと確信しています。日本の官庁の人たちは私から学びたいと言ってくれるのです。ですから、私はここに来ることができ、とても嬉しく思っています。

■日本は「何十年も前のアイスランドのよう…」

<ここで、以下のような日本の街の声を集めた映像を大統領に見てもらい感想を聞いた――>
・「ちょっとでも夫がやってくれたらと思うんですけどね…」(夫婦共働きで3人子育てした50代女性)
・「家事・育児の割合は、8対2(夫)くらいかな」「保育園に入れず、夫が長期で休むのは難しいので、自分の仕事復帰を遅らせました」(1歳の子供が待機児童で育休中の30代女性)
・「私が家事をしていても、夫は携帯を見ていたりします」(2歳・0歳の子育て中の30代女性)

何十年も前の同じような状況にあったアイスランドに戻ったような気がします。育休の平等に関する法律が制定されたことで、私たちは男性として、父親として、社会として多くの恩恵を受けています。私は恵まれています。とても幸せな人間です。それは、私が大統領だからというわけではありません。私が5人の子供の父親であるからです。そして育休を取得することができたので、子供たちが幼い時期に一緒に過ごすことができた。幸せであり、恵まれていると思います。

――大統領も育児休暇をとられたのですね。

私はこれまで5回の育休を取得しました。とても楽しいものでした。そして、それが私のキャリアに影響を与えるかもしれないという疑問は全くありませんでした。私はただ休暇を取り、その後、自分の専門分野を続けてきました。父親も母親と同じように育休を取得する人が圧倒的に多く、アイスランドの社会、経済の一部として溶け込んでおり、うまくいっているように見えます。

――育休中はおむつ替えもされましたか?

もちろん、想像以上にたくさんのおむつを替えました。新しい人が生まれ、その人生の大きな部分を占める――それが自分の責任であり特権であると感じることは、素晴らしい経験です。ですから、育児休暇の時間を一瞬たりとも逃したくはなかったのです。ずっと大切にしている素晴らしい思い出です。

――育休がキャリア形成のハードルになることはなかったのでしょうか。

何の障害もありませんでした。みんな私が父親になったことを祝福してくれたし、休暇中も寄り添ってくれました。私は大学で働いていましたが、時には、小さな子供を連れて同僚を訪ねることもありました。私にとって不利になるということは全くありませんでした。

男女平等への鍵は、母親と父親が「平等に育児休暇を取得できる制度」を充実させることだと考えています。また、育児や掃除、料理など、どちらか一方に負担が集中するような関係も好ましくないと思っています。もし私が仕事から帰ってきて、パートナーがすべてをやってくれると期待したら、それは間違っている。

――アイスランドの育休制度は、母親6か月、父親6か月、そして父母共有の6週間の育休が取得でき、その間の給与の8割が政府から支給されます。男性の取得率は8割を超えています。日本も男性育休制度が変わったばかりですが、育休取得率の男女差がとても大きいのが現状です。

ここに改善の余地があるのかもしれませんね。従業員、男性、父親が親としての義務を果たし、仕事に復帰する権利を与えることは、会社の長期的な利益につながるという考え方が、企業などの間で共有されなければならないと思います。私たちにはそれができています。日本にできないはずはありません。

――男性が育休を取得しても、「とるだけ育休」と呼ばれる実態もあります。育休中の男性の約3人に1人が、家事・育児時間が1日「2時間以下」でした。

育児休暇はホリデーではありません。育児休暇とは、あなたと子供の間につながりを作り、その子供が幸せと満足を感じるために必要なことをすべて行うことなのです。公園に散歩に行き子供に花のリースを作って遊んだり、おむつを替えたり、ご飯を食べさせたり、そして最後の片付けまで。だから自由なホリデーとは違うんです。自分の担当すべきことをするということです。それを休日のように見てしまうと、誤解が生じると思うんです。

■男女格差は“社会に害を与える”

――大統領は1968年生まれ。男性社会で育ったとのことですが、自身の意識が変わったきっかけは?

時間はかかりました。個人的な経験から言えることは、私の場合、母と父は家庭での仕事を分担していました。確かに料理は母の方が多くしていましたが、掃除は父がしていましたし、父は私や弟たちとスポーツで遊んでくれました。ときには父が、ときには母が長時間働きましたが、私たちを育てるのは母の義務でリラックスするのは父の権利という感覚は全くありませんでしたね。

全てが合わさってのことです。アイスランドの強い女性たちが、自分にも他人にも言っているように、私たちは人生のあらゆる側面に参加する平等な権利を持っているということ。そして、アイスランドの賢明な男性たちが、これは支援すべきものだと言っていること。さらに育休に関する法律、同一賃金に関する法律、同一賃金が施行されているかどうかを確認するための法律。それらが合わさり、私たちみんながいかに恩恵を受けているか分かったとき、社会と文化の一部として統合されるのです。

でも、男女平等の問題は、アイスランドの政治において重要なことではありません。性別による差別や、夫は家に帰ってくつろぎ、妻はすべての家事をしなければならないというような不公平な家庭があってはならないということは、今では誰もが認めるところです。それは不公平であり、間違っています。そして、それは長い目で見れば、社会に害を与えます。人口の半分が常に過労状態にあり、社会で平等な役割を果たす機会もないのですから。

■「男性らしさ」「強さ」とは…

つまり男女平等とは、公平、正義、経済的進歩、そして幸福のことなのです。そしてアイスランドの例は、正しい方向に進めば、誰もが利益を得ることができると示しています。男性が不自由になるわけでも特権を失うわけでもありません。これは公平性の問題であり、男性が弱くなることではありません。

強い男というのは威張り散らす人ではありません。強い男というのは自分のために周りの人を働かせるような人ではないのです。強い男とは、常に自分の思い通りにするような人ではないのです。強い男とは、他人の気持ちを理解する人であり、思いやりのある人であり、責任を喜んで引き受ける人であり、公平であり、良きパートナーなのです。

男女平等を強調することで、「男性らしさ」「強い」ということについての認識が変わってきます。私はここで説教をしたり、人にどうすべきかを伝えたりするつもりはありません。しかし、私に言わせれば、アイスランドで男女平等が進んだことは、すべての人に利益をもたらしたと言えるでしょう。女性にもメリットがあります。男性にも恩恵があります。私たちは共に利益を得ているのです。そして、それがあるべき姿なのです。

――全ての人に利益があるとのことですが、ジェンダー平等を進めて負の側面はありましたか?

今、アイスランドにおける男女共同参画のマイナス面を考えてみたのですが、どうしても思いつきません。私たちは、男女平等への動きが私たちのためになっていることを経験的に学んできただけなのです。ネガティブな面は何も思いつきません。

■“大統領と育児の両立” 失敗も…

――大統領というお立場はとても忙しいと思います。今も家事や育児を分担されているのでしょうか?

はい、もちろんです。私はとても恵まれた立場にあります。私も妻も家事の手伝いをしてもらっています。だから、以前とは違いますが、子供たちの活動に参加するようにしています。朝はみんなで起きて、子供たちと一緒に自転車で学校に行くか、天気が悪ければ、私が運転していきます。そして、「水泳道具は持っているか? 楽器は持っているか? 宿題はやったか? やっていないなら午後、一緒に終わらせなきゃ」などと声をかけ、育児に関わっています。

ある日、私は携帯電話でメールを送りました。「水着を忘れているよ。持っていこうか?」と。私の子供の一人に宛てたものでした。しかし、送る相手を間違えていました。アイスランドの首相に送ってしまったのです。首相から「これはあなたの子供に送ったの?」とメッセージがきました(笑)

■日本が変わるためには…

――日本では男性の長期の育休取得は広がっていません。背景には、人手不足や長時間労働、職場で取得しにくい雰囲気もあげられます。また男女の賃金格差もあり、男性が長期で休むと家計への負担も女性より大きい。となると結果的に女性が長期の育休を取得せざるを得ないという声もあります。それにより育児・家事の中心が女性という傾向が続いています。日本でも男性の育休が取得しやすくなるために、どんなことが必要だとお考えですか?

私は今すぐすべてを解決できるような簡単な答えを持っていません。アイスランドで行われたように、法律を変えることが有効かもしれません。また、「人生とは仕事だけではない」という文化的な変化も必要かもしれません。労働時間を減らし、家族と過ごす時間を増やすことは可能かもしれません。しかし、日本は多くの点で異なる国なので、アイスランドでの経験をそのまま移植するようなアドバイスはできません。

繰り返しになりますが、男女平等を進めることは長い目で見れば経済的にも実用的で有益です。なぜなら、そうすることで、誰もが熱心に、喜んで働くようになるでしょうし、もし女性が男性と同じように働く機会を得ることができれば、もしかしたら、一部の男性は長時間労働をしなくてもよくなるかもしれないからです。法律と社会の変化の組み合わせが必要なのです。

■変わったきっかけは“女性たちのストライキ”

――アイスランドがジェンダー平等の社会に大きく変わるきっかけは、何だったのでしょうか。

1975年10月のある日、アイスランドの女性たちは働くことをやめました。家庭で働くことをやめ、職場で働くこともやめました。首都のレイキャビクや他の町に何千人もの女性が集まり、「私たちがいかに重要な存在であるかを知ってほしい」と訴えたのです。この女性たちのストライキは、非常に象徴的で力強い瞬間でした。

もうひとつは、今から40年以上も前の1980年、初めて民主的に選ばれた女性の国家元首の誕生でしょう。それは、変化を意味するものでした。当時、「女性が大統領になれるのか」と言う人たちもいました。彼女は選挙戦でこう問われました。「あなたが女性だから投票する必要があるのですか?」。彼女は「いいえ、人間だから投票すべきです」と答えました。

また、「母親が大統領になれるのか」「シングルマザーが大統領になれるのか?」と言う人がいましたが、彼女は確かにそれができることを示してくれました。彼女が16年間、大統領を務めた後、質問は「女性が大統領になれるのか」ではなくなったのです。アイスランドの子供たちの中には「男性が大統領になれるのか」と聞く子もいます。アイスランドの官公庁では性別は問題ではありません。女性も男性も等しく代表になるべきです。女性も男性も等しく権利を持つべきです。女性も男性も等しく発言権を持つべきです。それは女性のためにもなり、男性のためにもなり、社会全体のためにもなるのです。

これはアイスランドが学んできたことです。完璧な社会ではありません。しかし、男女平等に関しては、正しい方向に進んでいることは確かです。そして、私たちはその路線を継続したいと考えています。そして、より多くの国が私たちに続くことができれば、より良いことです。

■大統領からのメッセージ

――アイスランドは女性議員や閣僚も4割となり、上場企業の役員は男女どちらも4割超とするクオータ制が導入されていますが、日本は国会議員の女性比率は約1割、企業の女性役員の割合も少ない状況です。日本が変わるには?

私は日本の人々のもてなしと優しさを受けています。指導するような立場にはありません。私はただ皆さんに、男女平等が進むと、経済的な面だけでなく、公平性や正義の面でも明らかにメリットがあることを考えてみてほしいのです。

皆さんは、どのような社会に住みたいですか? 人口の半分が常に過小評価されていると感じているような社会や、人口の半分が常に働き過ぎている社会に住みたいでしょうか。それは気持ちのよいものではないと思います。私がここ日本でどれだけ歓迎され、どれだけ親切にされてきたことでしょうか。もしかしたら、次に日本に来る機会、その次の機会には少しずつ変化が見られ、良い方向へ向かっているかもしれません。

いずれにせよ、他の国を訪ね、他人から学ぶことは、貴重な経験だと思います。日本の方々もぜひアイスランドを訪れて、歴史や文化について学び、壮大な自然を楽しんでください。なぜなら、対話し、意見や体験してきたことについてやりとりすることは、私たちみんなのためになると強く信じているからです。私たちは常に協力し合い、意見を交換していかなければなりません。そして、未来へのビジョンや希望も。ありがとうございました。