ウクライナ首都攻防の最前線 電気も水もない“破壊の町”に戻り…寒さに耐え語った「希望」
ウクライナの首都近郊からロシア軍が撤退して2週間以上が経過し、住民が戻りはじめた町もあります。しかし、首都攻防の最前線となった町では、電気も水もなく、生活インフラの再建という大きな課題に直面しています。
※遺体が映っている映像を加工しています
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18日、日本テレビが向かったのは、激戦地となり、今も戦闘の爪痕が色濃く残るウクライナの首都・キーウ近郊のイルピンです。
記者
「大きな橋は、完全に崩れ落ちてしまっています」
首都を巡る攻防の最前線に位置していたイルピンでは、川の中に、がれきと化した橋がありました。この橋は、先月、ロシア軍の侵攻を防ぐため、ウクライナ軍が自ら爆破。住民たちは当時、細い避難路を歩いて渡り、イルピンを脱出していました。
街のショッピングセンターの壁は、完全に破壊されていました。攻撃により、屋根に空いた穴からは、光が差し込んでいました。この場所で、私たちが出会ったのは、ウクライナの兵士です。兵士は首都・キーウを守るため、この地で戦っていたということです。
ウクライナ兵
「ここは戦いが一番、激しかった場所なんだ。戦車も歩兵も全て攻めてきた」
3月中旬、ロシア軍との戦闘中に撮影したという映像には、建物が燃えさかる中、「食い止めた」とつぶやく様子が撮影されていました。彼らは民間人を守りながら、ロシア軍と市街戦を展開。首都ののど元にまで迫る軍隊を撃退したということです。
ウクライナ兵
「この街は戦争経験者が多く暮らしていて、この街を守っていたんだ。イルピンで止めなかったら、ロシア軍はキーウを大砲で攻撃できただろう」
ロシア軍がキーウ近郊から撤退して2週間以上がたち、街には避難先から戻る住民も出てきています。
避難先からイルピンに戻った ナタリアさん
「歯磨き粉とシャンプーください」
配給の列に並んでいたナタリアさんは、南西の街に避難していましたが、3日前、母親とともにイルピンに戻ってきました。自宅には、銃弾や砲撃の跡が無数に残されていました。
ナタリアさん
「ここに爆弾が落ちたんです」
家の中には、大きな被害はありませんでしたが――
ナタリアさん
「電気はつかないです」
窓がない廊下は真っ暗なまま。さらに、水道やガスもいまだ破壊された状態です。
ナタリアさん
「(ガスが)でない、でない。水もでない」
この日の最高気温は6℃。寒さに耐えながら庭で火をおこし、食事をとっていました。電気も水道もない中、ナタリアさんはイルピンでの生活を続けると決意しました。
ナタリアさん
「私には力がみなぎっています。街を元に戻したい。私はここで生まれました。大好きな街です。街(イルピン)に住み続けます。街の復旧を待っています」
激戦の爪痕が残る街で、復旧の日を待っています。