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国際
2020年4月21日 20:27

金正恩委員長「危険な状態」と報道

「そんなのねつ造だ」

中国・北京の北朝鮮大使館関係者がそう否定したのは、米CNNが報じた「北朝鮮の金正恩委員長が非常に危険な状態にあるとの情報がある」という驚きのニュース。しかしその後、否定的な報道もあり、情報が錯そうしています。私たちはこのニュースをどう受け止めればよいでしょうか?金委員長や北朝鮮の最近の動向、日韓政府や専門家の見方を解説しながら、情報を整理します。

■報道された記事の内容は?

CNNの記事の見出しは「金委員長、手術を受け重篤の情報」。その記事では、

・金正恩委員長が手術を受けて、非常に危険な状態にあるとの情報があり、アメリカ政府が状況を「精査している」
・この情報を直接的に知る立場のアメリカ当局者が明らかにした

と伝えています。

また、一部の韓国メディアは、北朝鮮内部の消息筋の話として「金委員長が今月12日に心臓血管手術を受けて現在も療養中だ」と伝えています。

■金委員長 最近の動向は?

この報道に関しては慎重な見方もありますが、こうした健康不安説が出た背景にあるのが、最近の金委員長の動向です。

金委員長が最後に公の場に姿を見せたとされるのは今月11日のこと。そのときの映像を見ると、表情からは変わった様子は見受けられません(動画の3:02からご覧いただけます)。

この会議は朝鮮労働党の重要会議である「政治局会議」で、ここで「新型コロナウイルスの流入を防ぐための国家的な対策を強化・徹底することを決めた」と北朝鮮メディアは伝えています。

ただ、これ以降、金委員長は姿を見せていません。政治局会議の翌日(12日)に「最高人民会議」が開かれたと北朝鮮メディアは伝えていますが、この重要な会議に金委員長は出席しなかったとみられています。最高人民会議とは、国の予算や重要方針などを決めるもので、日本でいう国会にあたる場所です。

さらに、今月15日、金委員長の祖父である故・金日成国家主席の誕生日にあたる「太陽節」に、金委員長は姿を見せませんでした。例年だと祖父の遺体が眠る宮殿を訪問するのですが、ここで金委員長の姿が確認されないのは異例のこと。こうしたこともあって健康状態をめぐる憶測が飛び交っていました。

■金委員長「不在」でもミサイル発射?

今年に入ってから、北朝鮮が発射した”ミサイル”をまとめました。

3月2日:短距離弾道ミサイル 2発
3月9日:複数種類の短距離の飛翔体
3月21日:短距離弾道ミサイル 少なくとも2発
3月29日:短距離弾道ミサイルとみられる2発
4月14日:短距離巡航ミサイルとみられる飛翔体 数発

今年に入ってからも5回ミサイルの発射が行われ、今月14日にも飛翔体を発射しています。

11日に金委員長の直近の姿が確認でき、12日に手術が行われたという情報もありますが、もしそうだとすると金委員長の指示なしに14日にミサイルを打つことはあり得るのでしょうか?

専門家は、ICBMや核実験なら別だが、「訓練」と称する通常のミサイルでは、金委員長の指示なしに打つこともできなくはないという見立てもあるとしています。

■専門家「状況を伺うため、米国が情報流したのでは」

北朝鮮政治が専門の慶応義塾大学・礒崎敦仁准教授は、最高人民会議については昨年に憲法が改正された関係で金委員長は出なくても不思議ではないため、最高人民会議への欠席だけで健康不安だと判断することについて否定的な見方をしています。

また、別の専門家は「状況を伺う意味もあって米高官が流したのかもしれない」との見方を示しています。

実はこれまでも、金正恩委員長を巡っては動静が注目されたことがありました。

2014年にも、金委員長は最高人民会議を欠席。40日にわたり動静が伝えられず、一部メディアは健康不安説などを報じていました。

その後、視察の様子の写真が公開され、そこには黒い杖をついた金委員長の姿が。写真の公開について韓国の政府関係者は「重病説や失脚説を払拭するためではないか」と述べ、健在をアピールする狙いがあると分析していました。

■「今後2日動静がなければ”いよいよ危ない”」日韓政府の見方は?

今回の報道が仮に事実だったら重大なニュースですが、韓国大統領府は「北朝鮮の内部に特異な動向は捉えられていない」とのコメントを発表。金委員長の健康状態が危険な状態にあるとの報道に否定的な見方を示しました。

さらに、複数の韓国メディアは韓国大統領府の関係者の話として、「金委員長は現在、側近たちと地方に滞在中で、通常の活動を行っている」と伝えています。

今回のCNNの報道に対し、菅官房長官は「報道は承知しているがコメントは控える」としつつ、「引き続きアメリカなどと緊密に連携しながら関連する情報の収集・分析を行っていきたい」と話しました。

また、日本の外務省幹部は「今までも何度も健康不安的な話はあったが、その都度、北朝鮮メディアが反論の動静報道をしてきた」「もし今後2日以内に金委員長の動静が報じられなければ”いよいよ危ない”という話になる」と述べています。

つまり、この情報が本当かどうかは、あと1~2日でわかるのではないかということです。

■北朝鮮の新型コロナ事情は?

ちなみに、北朝鮮は新型コロナウイルスについて国内の感染者は1人も出ていないと強調してきました。しかし、きょうの報道では「ほかの国での状況は他人事ではない。油断は絶対に禁物だ」と警戒しています。新型コロナウイルスの影響で北朝鮮の医療がどんな状況にあるのかは、定かではありません。

そんな中で、金委員長が仮に入院したとして、従来の医療を受けられる状態なのでしょうか。今後、北朝鮮がどのような発信をするのか注目です。

※4月21日放送 news every. 「ナゼナニっ?」より