参議院選挙の応援演説中に銃撃され亡くなった安倍元首相をしのび、国際政治学者のイアン・ブレマーさんがアメリカ・ニューヨーク日本総領事館に弔問に訪れました。イアン・ブレマー氏に銃撃事件の受け止めと、日本そして世界への今後の影響について話を聞きました。
■イアン・ブレマー氏…「安倍元首相は最強のグローバルリーダーの一人」
ニューヨーク日本総領事館に設けられた弔問記帳台に、12日訪れた国際政治学者のイアン・ブレマーさん。銃撃事件の前の週に日本に滞在していたこともあり、ニュースを聞いて非常にショックを受け、突然の悲劇に唖然としているといいます。
――安倍元首相とのエピソードを教えてください
「初めて会った時から一緒に座って、世界について話し合いました。スキンシップを好む人で、腕や肩に触れてくれ、この人のことを知りたいと思いました。とても魅力的だからこそ、バイデン大統領やオバマ元大統領、トランプ前大統領とも関係を築くことができたのだと思います」
「私は安倍さんのことを10年以上知っていますが、憲法改正や再軍備に関しては個人的には同意できませんでした。しかし、とても誠実で尊敬に値する本物の会話ができたと感じています」
――安倍元首相をどう評価していますか？
「日本だけではなく、世界を舞台に活躍する最強の国際的リーダーの1人だと思います。安倍さんは、私が生きている間で、世界の舞台で日本の役割を建設的に拡大するために最も貢献した唯一の日本の首相だと思います。それが、彼が残したレガシーです」
■「安倍元首相の構想で国際的枠組みが発展」
――安倍さんの死で自民党はどう変わると思いますか？
「私の友人に、トランプ前大統領に対応出来るのは自分しかいないから、また首相になるしかないと冗談を言っていたのを覚えています。自民党の最大派閥の長だったので、自民党にとっては大きな痛手だと思います。
しかし、安倍さんへの同情が先週末の参議院選挙での大きな勝利につながりました。岸田首相が望む憲法改正の議論も進むでしょう。日本の政治システムは安定していますし、弾力的でもあるので心配はしていません」
――ロシアや中国との関係はどうなると思いますか？
「まず中国政府の反応が敬意を表したものであったのはよかったと思います。しかし日本の安全保障の環境はとても厳しいです。安倍さんが首相だったころは、ロシアとの関係を改善しようとしていましたがもはや不可能です。私は岸田首相が、民主主義の国とより緊密に協力するという安倍元首相の遺志を継いでくれると確信しています。
安倍元首相が最も親しかったのは、インドのモディ首相でした。日本、アメリカ、オーストラリア、インドとの4か国の枠組み、「クアッド」は安倍さんのアイデアですし、TPPも実現しました。安倍さんの構想とレガシーを背景に国際的な枠組みが発展しているのです」
イアン・ブレマーさんは銃撃事件について、「日本がこのような出来事を経験するとは思っていなかった。私たちアメリカ人は、友人である日本人のために、手をさしのべる必要があります」と思いを述べました。
