米大統領が強める「中国の透明性」への疑念
■■ワシントン支局長の“気になるコトバ”■■
~~「ボーイフレンドも感染し、拡散が始まった」(4月15日)~~
4月15日のトランプ大統領の記者会見。開始から1時間がたった頃、大統領に近いとされるFOXニュースのホワイトハウス担当、ジョン・ロバーツ記者が突然、ウイルスの発生源について語り始めた。「武漢にあるウイルス研究所から流出したと聞いている。安全基準が緩く、インターンが感染し、そのボーイフレンドも感染、市場に行って拡散が始まったというが…」と。質問にしては唐突かつ具体的で、耳を疑った。大統領の答えは「言いたくないが、徹底的に調査している」とのことだった。
トランプ大統領が連日、“中国の透明性”に強い疑念を投げかけている。ウイルスの発生源をめぐっては翌々日に「多くの怪しい点がある」と発言、さらに翌日には「故意の責任があれば、代償を払うべき」とも語っている。トランプ政権は、ウイルス研究所だけでなく、同じ武漢にある疾病対策予防センターにも発生源として疑いの目を向けているようだ。現時点でその根拠は明らかになっていないが、アメリカの情報当局による調査結果は近く大統領のもとに届く、と伝えられている。
こうした動きに先立って、トランプ大統領は14日、WHO(世界保健機関)への資金拠出停止を表明した。この会見でも大統領は「WHOが中国の透明性の欠如を訴えていれば…」と、ここでも“中国の透明性”に矛先を向けた。武漢市が死者数を改訂した際も、すぐさま反応し「中国の死者数はもっと多いはずだ」と訴えた。
なぜここまで中国への責任転嫁、責任追及を強め、対立をあおるのか。
その理由はやはり、秋の大統領選だろう。国内で初動対応への批判がある中、「中国潰し」は支持基盤とする保守強硬派への強いメッセージとなる。
とはいえ、いまは新型コロナウイルスの収束に向け、国際社会が一致して立ち向かう時だ。トランプ大統領が主張するWHOの“中国中心主義”はさておき、グローバルな対応、中でも米中という大国の連携は欠かせないだろう。トランプ大統領の“アメリカ第一主義”が、貿易だけでなく、保健分野にも及ぶようなら、世界はさらなる危機にさらされることになる。
(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)