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核・ミサイル開発の裏で北朝鮮の“外貨獲得”戦略 サイバー犯罪に密輸も…

2024年1月8日 17:00
核・ミサイル開発の裏で北朝鮮の“外貨獲得”戦略 サイバー犯罪に密輸も…
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核・ミサイル開発を進める北朝鮮。国連安保理制裁の影響で、経済的な苦境も伝えられる中、その莫大な開発資金をどうやって確保しているのか。サイバー犯罪、密輸、肉体労働…北朝鮮が軍拡路線の裏側で進める“外貨獲得戦略”とは。

■中国当局が数十人を拘束 北朝鮮の“金密輸”に関与か

最近、中国の公安当局が力を入れて大規模な摘発に乗り出したものがある。それが、北朝鮮による金塊の密輸だ。2023年10月以降、北朝鮮産の金の密輸に関わったとして、中国人が次々と公安当局に拘束されているという。

中朝関係筋によると、23年末までのわずか3か月間で当局が差し押さえた金塊は、約1000キログラム(市場価格で約85億円相当)。少数民族の「朝鮮族」など、数十人の中国人が拘束された。いずれも遼寧省や吉林省の中朝国境地域で密輸に関わったとされる。

“後ろ盾”とされる中国が、北朝鮮の密輸にここまで厳しい態度をとるのは異例だ。中朝関係筋は「最近の北朝鮮とロシアの蜜月関係に対する不快感の表れではないか」と指摘する。

北朝鮮にとって、金を含む鉱物資源は外貨稼ぎの主力だった。しかし、16年の国連安保理制裁で輸出が禁止され、近年は新型コロナウイルス感染防止に伴う国境封鎖も影響し、北朝鮮経済は厳しい状況が続いている。

こうした中、北朝鮮は23年に入り、金の密輸を急拡大させた。従来の「瀬取り」(洋上で船荷を積み替える手法)に加え、中国との国境封鎖が緩和されると、在外公館を拠点に外交官が金を運搬し、中国の業者に密売するケースも出てきたという。

■核・ミサイル開発を加速 “外貨稼ぎ”は最重要課題に

北朝鮮が外貨獲得に躍起なのは、核・ミサイル開発にかかる莫大な軍事費を必要としているからだ。23年11月には、“3度目の正直”で軍事偵察衛星の打ち上げに「成功」したと主張。韓国の情報機関は「ロシアの技術支援があった」との見方を示した。同年9月に金正恩総書記とプーチン大統領が会談を行って以降、両国の軍事協力が拡大した。

ロシアという技術的な後ろ盾を得た北朝鮮が、大量破壊兵器の開発をさらに加速させることになれば、それにあてる資金の調達がますます重要なミッションとなる。

■世界に潜伏する“IT技術者” 外貨稼ぎの主力に

北朝鮮の制裁違反について調査する国連の専門家パネルは、23年10月に中間報告書を公表した。それによると、北朝鮮が22年の一年間にサイバー攻撃で盗み取った暗号資産は、推計17億ドル相当(約2500億円)と過去最高額にのぼったという。

北朝鮮は近年、外貨稼ぎの新たな主力部隊として、多数のIT技術者を国外に潜伏させている。

アメリカの財務省や国務省、FBI(連邦捜査局)は22年に共同声明を出し、「北朝鮮が高度な技術を持つ数千人のIT技術者を派遣している」と指摘した。IT技術者は、チーム全体で年間300万ドル(約4億2000万円)以上を稼ぐこともあるとしている。

また、IT技術者は、各国の企業でソフトウエア開発などの業務を担う。大半はリモートワークが可能なため、身分を韓国人や日本人などと偽り、報酬を得ているという。彼らはハッカーとの関連も指摘されており、雇用された企業のシステムをサイバー犯罪の入り口にしている疑いもある。

IT技術者の多くは、中国やロシアなど、北朝鮮と友好関係にある国に身を潜めている。拠点は頻繁にかわるため特定も難しく、“野放し”になっているのが実情だ。

■収入源確保に躍起…新たな動きも

国外で働く北朝鮮労働者の大半は、中国にいるとされる。ところが最近、北朝鮮はロシアへの労働者派遣を推進する動きを見せている。

23年12月、ロシア沿海地方の代表団が北朝鮮を訪れ、両国の経済協力について協議。韓国メディアは、ここで労働者派遣をめぐる議論が行われた可能性を報じた。北朝鮮の労働者派遣も、国連安保理制裁に違反している。

ロシアに派遣された者の多くは、「建設業などの肉体労働」(消息筋)に従事するという。ウクライナ侵攻に若者が動員される中、ロシア側にとっては、貴重な労働力だ。IT技術者に比べてコスパは悪いが、北朝鮮にとってはこれも貴重な収入源であり、今後も新規労働者を大量に派遣するとの観測がある。

■兵器開発の資金源を断てるか

さまざまなルートで外貨を稼ぐ北朝鮮。その資金源が遮断されない限り、これからも軍拡路線を突き進むだろう。

23年12月、安全保障を担当する日本とアメリカ、韓国の高官が北朝鮮対応をめぐり協議。核・ミサイル開発の資金源となる不正なサイバー活動などを阻止すべく、連携を強化することで一致した。ただ、どこまで実行力のある対策を打ち出せるかは未知数だ。

24年も北朝鮮の脅威を無視できない一年になる。それを支える外貨獲得戦略に歯止めをかけることができるのか、国際社会の対応力が問われている。

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