北が連絡事務所を破壊 どうする文政権
北朝鮮の国営メディアは、16日午後、開城にある南北共同連絡事務所を完全に破壊したと伝えました。一方、韓国大統領府は強い遺憾を表明し、場合によっては対抗措置を取ると警告しました。最新情報をソウルから中継で伝える。
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■Q:破壊によってケガ人は?
これまでのところ、少なくとも韓国側では人的被害は確認されていません。今年1月末に北朝鮮側が新型コロナウイルス対策を強化したことに伴い、連絡事務所から韓国側の人員が撤収していた。
■Q:どのように破壊した?
詳しくはまだわかっていない。韓国メディアが政府から国会への報告として伝えたところによると、事務所1階に設置された爆薬が爆発し、上の階が崩れ込むような形で完全に破壊されたということです。どのような爆薬だったかは、まだわかっていませんが、鉄鋼を使った堅牢な建物を破壊させる強力な爆薬が使われたとみられます。
また、韓国メディアによると15日、共同事務所周辺で人と装備を積んだトラックが集まっているのが確認され、韓国政府は近く破壊があるとみて監視を強めていたということです。
■Q:北朝鮮の狙いは?
これには北朝鮮の国内事情も背景にあるとみられます。北朝鮮側が韓国への圧迫を強めたきっかけは、脱北者団体が飛ばした金委員長を批判するビラですが、これはあくまで“口実”という見方が大勢です。
北朝鮮が圧迫すると、韓国側はビラの散布を取り締まる法整備を進める方針を示すなど譲歩する姿勢を見せました。文在寅政権を揺さぶり、さらなる譲歩を引き出す狙いがあるとみられます。
また、北朝鮮が新型コロナ対策として国境を閉じる中で、もともと厳しかった経済がさらに冷え込んでいるとの見方もあり、国内でくすぶる経済などへの不満をそらす狙いもあるものとみられます。
■Q:本気度、どこまでやる?
金正恩委員長の妹・与正氏が談話で予告した通りのことをやっている。その与正氏が別の談話で言及しているのが、緊張緩和のための南北軍事合意の破棄や、経済協力事業である開城工業団地の完全撤去です。
韓国政府もさらなる措置に警戒しているとみられ、韓国メディアによりますと、連絡事務所の爆破30分後に韓国側から開城工業団地に供給されていた電力を遮断したということです。
■Q:韓国政府はどう反応?
夕方、韓国大統領府は強い遺憾の意を表明した上で、「全ての責任は北朝鮮側にある」として、場合によっては強力な対抗措置をとると警告しました。
国防省も「北朝鮮が軍事的挑発を行うなら、我が軍は強力に対応する」との立場を表明しています。
■Q:文政権どうするの?
難しい立場に置かれていると思う。これまでも、韓国の保守系メディアからは「北朝鮮側の脅迫に政府はのんきな立場ばかり出している」と批判が出ていました。
実際に北朝鮮側が事務所の爆破に踏み切った以上、文政権としても融和一辺倒とはいかなくなるため、大幅な戦略の練り直しを迫られることになります。