ウクライナに残る父「もっと遠くへ」……再び避難、5歳の娘は「帰りたい」 避難の子どもは430万人 長期化で健康不安も
ウクライナから避難した子どもは430万人に上ります。ポーランドからさらに遠くに逃れる家族や、避難所を出た後の行き場がない人に話を聞きました。避難民が治療を受けるハンガリーの仮設診療所では、日本人医師が長期化とストレスを懸念しています。
■再び避難…ポーランドからドイツへ
ポーランド・プシェミシルで24日、風船で元気に遊ぶ子どもがいました。ウクライナから逃れ、約2週間、避難所に身を寄せるヴィカちゃん(5)一家です。
母親のタティアナさん(41)が「おいで。みんなにさよならして」と声をかけました。次はドイツに向かうといいます。
タティアナさん
「夫に『ドイツに行け』と言われました。『もっと遠くに行った方がいい』と。西ウクライナとポーランドとの国境で何が起こるか分からないからです」
■ウクライナに残る夫に「生きていて」
息子「パパ、やっほー」
父「元気かい?」
タティアナさん「頑張って。生きていてね」
ヴィカちゃんは悲しそうな表情を浮かべ、「ウクライナに帰りたい…」と漏らしました。
一家はその後、列車で出発。車内でヴィカちゃんは「幼稚園で新しい友達をつくります。いい子にしています」と、明るい笑顔を見せました。
ユニセフによると、これまでに避難したウクライナの子どもは430万人。子どもの人口の半数以上になります。
■避難所が閉鎖…「行くところない」
さらに遠くへ避難する人たちがいる一方で、どこに行くべきか途方に暮れる人もいます。
閉鎖される予定の、プシェミシルの避難所にいた高校生(16)と祖母(64)。避難所を出た後、行き場がないといいます。
祖母は「どこも行くところがありません。流れに身を任せます」。高校生は「学校へ行けるかどうか。卒業できるか心配。大学にも行きたいし、仕事も見つけないと」と言いました。
■国境付近で支援…日本人医師の懸念
避難者を支援する医療チームの日本人医師に、話を聞くことができました。
ウクライナとの国境から1kmのハンガリーの街、ベレグスラーニー。トレーラーが仮設の診療所で、国際医療ボランティア「AMDA」が活動しています。1日に訪れる患者は約20人といいます。
避難者を支援するAMDAの佐藤拓史医師
「私が診療した中には、キーウ(キエフ)付近で銃に撃たれた女性がいました」
ロシア兵に足を撃たれたという23歳の女性は、つえをついてキーウから1週間かけて国境を越えてきたといいます。佐藤医師は「撃たれた状況は話していただきましたが、表情は変わりませんでした。とても何も言えませんでした」と振り返ります。
岩本乃蒼アナウンサー
「(診療所には)ぬいぐるみも置かれていますが、お子さん向けでしょうか?」
佐藤医師
「はい、子どもはたくさん、よく来るので」
岩本アナウンサー
「(侵攻から)1か月が経って、市民の方の疲労度は?」
佐藤医師
「緊張、ストレスに起因する病状・症状を訴えられる方が増えています。おう吐、下痢、腹痛などで、歩いて避難されているので脱水(症状)などもあります」
岩本アナウンサー
「今後、一番懸念されることは?」
佐藤医師
「ストレスというのは病気をつくります。そういう意味では、長引けば長引くほど病気を生み出してしまうので、健康状態が悪化する人がたくさん増えると思います。それを心配しています」
(3月25日『news zero』より)