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トランプ氏“激怒” …米中間選挙で共和党が伸び悩み 専門家「『中絶禁止』に対する危機感」

2022年11月10日 21:37
トランプ氏“激怒” …米中間選挙で共和党が伸び悩み 専門家「『中絶禁止』に対する危機感」

接戦が続くアメリカの中間選挙は大方の予想を覆し、トランプ前大統領の共和党が伸び悩んでいます。これを受けて、“トランプ氏が激怒している”とも報じられています。

・夫人に“八つ当たり”
・「中絶」で苦戦
・出馬はどうなる?

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■トランプ氏が夫人に“八つ当たり”? 「悪いことは全て他人のせい」

注目のトランプ氏は、フロリダ州の自宅で支持者らとウォッチパーティーを開いて、開票の行方を見守っていました。CNNは「中間選挙の結果に激怒し、怒鳴り散らしている」との側近の話を伝えています。また、ニューヨークタイムズは「トランプ氏がメラニア夫人も責め立てている」と伝えています。

トランプ氏は今回の選挙で多数派を奪還できると自信たっぷりだったので、開票結果に不満や焦りが募っているとみられています。

上院の定数は100議席で、このうち今回改選されるのは35議席です。NBCによると、日本時間10日午後4時現在、上院ではバイデン大統領の民主党が非改選の36議席も含めて48議席を、トランプ氏の共和党は非改選の29議席を含めて49議席を獲得しています。つまり、残る3州がカギを握ることになっています。

今回、トランプ氏にとって痛手だったのが、最激戦州の1つとされたペンシルベニア州でトランプ派のオズ候補が敗れたということです。

“トランプ氏がメラニア夫人を責め立てている”という話は、実はメラニア夫人がこのオズ候補を推薦するよう、トランプ氏に助言したからだとされています。NBCは「トランプワールドでは、悪いことは全て他人のせいにする」と論評しています。

■専門家“中絶が争点化していなければ、民主党は大敗していた可能性”

元々、中間選挙は政権の「通信簿」とも言われ、現職大統領に厳しい結果が出る傾向があります。さらに、最近の歴史的インフレがバイデン大統領への逆風になっていて、野党・共和党が優勢とみられていました。そのため、トランプ氏も勝つ気まんまんの演説を繰り返していました。

最終演説では、共和党のシンボルカラーになぞらえて、「巨大な赤い波に乗ろう!」と支持を訴えていました。

共和党 トランプ前大統領(7日)
「この国の破壊を止め、アメリカンドリームを守りたいなら、あした、巨大な赤い波に乗って共和党に投票しなければならない」

しかし、実際の開票結果を受けて、バイデン大統領は「赤い波は起こらなかった」と述べ、アメリカメディアも“トランプ氏は厳しい状況に置かれている”と伝えています。

では、今回なぜ、赤い波は起こらなかったのか、アメリカ政治に詳しい慶応義塾大学の渡辺靖教授に聞きました。理由の1つは「中絶禁止」に対する危機感だといいます。

共和党には「中絶反対派」が多いです。CNNなどが行った出口調査によると、今回の選挙で有権者が最も重視した項目は「インフレ」が31%で最多ですが、2番目に多かったのが「人工妊娠中絶」で27%でした。今年6月、連邦最高裁が中絶の権利を認める判決を覆したことで、多くの州で事実上、中絶が禁止されたり、制限されたりすることになりました。これに対して危機感が広がり、“女性票の掘り起こしにつながった”とも指摘されています。

渡辺教授は、「中絶が争点化していなければ、民主党は大敗していた可能性がある」とも指摘しています。

■共和党候補の約半数が“選挙否定派” トランプ派への警戒感が…

2つ目の理由は、トランプ氏が推薦するトランプ派候補者への「警戒感」です。

例えば、激戦ジョージア州のウォーカー候補は、元アメフトスター選手のトランプ派候補ですが、人工妊娠中絶をめぐり「どんな理由があっても中絶には反対」と主張していたにもかかわらず、「過去に交際相手に中絶を強要していた」と報じられました。

また、アリゾナ州の知事候補レイク氏はトランプ氏お気に入りの元キャスターで、「ハイヒールを履いたトランプ」とも呼ばれています。レイク氏は、トランプ氏が敗北した前回の大統領選は不正があったとして「選挙結果は受け入れない」と主張する、いわゆる“選挙否定派”の1人です。

実は、共和党候補者の約半数にあたる300人近くが“選挙否定派”と言われていて、今回の選挙でも自分が負けた場合は「結果を受け入れない」と示唆する候補者もいました。

こうした過激な言動や候補者としての資質に警戒感を示す人々が一定数いて、それが「赤い波」を止めることになったとみられています。

■トランプ氏の手法に反感多く… 民主党に投票?

3つ目の理由は、トランプ氏が最近、中間選挙で大勝できると見込んで大統領選出馬に向けた発言がどんどん大胆になってきていたことです。5日のペンシルベニア州での演説では、「私たちはあと数日で(中間)選挙に勝つ! 次の大統領選でも勝つ! あの美しい家(ホワイトハウス)を取り戻すんだ」と述べていました。

ただ、対立をあおって分断を深めるトランプ氏の手法に反感を抱く人も多く、トランプ氏の出馬をこころよく思わない人が民主党に入れたとの分析もあります。

トランプ氏は投票日前日に「今月15日に重大な発表を行う」と予告していて、大統領選への出馬表明とみられていますが、今回の結果を受けてどうするのか、今のところ中止や延期という話は出てきていません。

一方のバイデン大統領は大統領選への出馬について、「来年の早い時期に決断したい」と述べるなど、これまでより一歩踏み込んだ発言をしています。

    ◇

中間選挙の結果は、2年後の大統領選の候補者選びにも直結します。今回の結果を受けて、出馬表明の時期を探ってきたトランプ氏がどう出るのか、そして、来週80歳の誕生日を迎え高齢が懸念されているバイデン大統領がどのような決断をするのか、アメリカの行方を左右する重要な局面が続きます。

(2022年11月10日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)