EU離脱で“漁業権”争い FTA交渉難航
イギリスとEU(=ヨーロッパ連合)が進める自由貿易協定の交渉が暗礁に乗り上げています。なぜ交渉が進まないのか。NNNロンドン支局・山田記者の報告です。
イギリス南東部にあるへースティングス。古くから漁業で栄えた港町です。この町の漁師たちは長年、ある不満をつのらせてきました。
漁師「EU加盟国の船が近くまできて、魚をもっていってしまうんだ」
イギリスはEUの一員だったため、イギリス近海で漁ができる「漁業権」がほかの加盟国と“共有”されてきたのです。しかし、イギリスは今年、EUを離脱。加盟国と同等に扱われる移行期間が終わる来年以降、時期をみて排他的経済水域内でのEU加盟国の「漁業権」を打ち切る方針です。
へースティングス漁業組合 ポール・ジョイ会長「EUの漁師がイギリスの海域で漁ができるなんてばかげている。イギリスの海で漁ができるのはイギリスの漁師だけのはずだ」
この「漁業権」をめぐる問題が今、新型コロナウイルスで疲弊したヨーロッパ経済のさらなる不安要素となっています。EUはイギリス近海での操業の継続が認められなければ、現在、交渉が進められているイギリスとの自由貿易協定を締結できないと警告。合意のないまま年が明ければ関税が復活し、互いの経済に大きな打撃となることが避けられません。
イギリス・ジョンソン首相「EUには自由貿易協定を締結する気がないのか?イギリスは(交渉決裂に備えて)準備を進める」
しかし、ジョンソン首相は16日、EUが根本的に方針を変えなければ交渉を打ち切るとして、強く譲歩を迫りました。最悪の事態を避けることはできるのか。イギリスとEUに残された時間はあとわずかです。