“奪還”ヘルソン…電力不足 病院も「夜はスマホの明かりで…」 ロシア軍が撤退前にインフラ破壊
ウクライナが奪還した南部の都市ヘルソンにジャーナリストの佐藤和孝さんが入りました。ロシア軍が撤退前、インフラを破壊したこの街では、本格的な冬を前にして電力不足が深刻に。病院でも、夜はスマートフォンのライト頼りになっているといいます。
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21日、ウクライナ南部・ヘルソン州の州都ヘルソン市へ向かう道中、ジャーナリストの佐藤和孝さんが見つけたのは、破壊されたロシア軍の車両やミサイルが着弾した跡です。道端には、ロシア軍が捨てていったとみられる銃弾などが並べられていました。
ヘルソン州は、3月からロシアが占領していましたが、ウクライナ側の反転攻勢が強まり、ロシア軍は今月、ヘルソン市からドニプロ川の東に撤退しました。
しかしこの日、ヘルソンでの取材中にも、砲撃音は鳴り響いていました。
佐藤和孝さん
「今でもロシア軍は攻撃しているんですか?」
ヘルソン市民
「毎日です。毎日、ロケット砲による砲撃で私たちの街を攻撃しています」
中心部の広場では、戦闘で亡くなった兵士らに、花やろうそくがささげられていました。
その広場で、長い行列ができていたのが、無料で配られていたSIMカードです。さらに市民たちは、設置された大きなテントの中で、携帯電話の充電をしていました。
ロシア軍はヘルソン撤退を前に、電気や通信などのインフラを破壊。奪還したウクライナ側が、電気やインターネットなどを無料で使える場を市民に提供しているのです。
ヘルソン市民
「市民たちは携帯を充電できるようになって、食料もあります。でも、水や電気がありません」
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電力不足は、医療現場でも深刻な問題になっていました。
市内のルチャンスキー病院を訪れると、明かりのついていない廊下は薄暗く、手術室は真っ暗でした。
病院スタッフ
「電気がありません」
「電気さえあれば……。医療機器や薬などは足りていますが、電気や暖房が問題です」
窓のある病室は、昼間は明るさがありますが、病院スタッフは「夜はこのように(スマートフォンの)ライトをつけて作業します」と話しました。
数日前、ロシア軍の攻撃に夫婦で巻き込まれたという男性は「2回ほど爆発がありました。私は腕と背中をケガしました。妻は右の太ももにケガをしています」と話しました。電気がなくても、患者がいる限り治療は続けられています。
食事はどうしているのか尋ねると、案内されたのは“建物の外”ーー。
砲撃音が響く中、調理スタッフが寒空の下で食事を作っていました。電気がないので、使われていたのは“まき”です。
本格的な冬を前に、電力不足からの復旧にメドが立ちません。
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ゼレンスキー大統領は、22日に公開した動画で「ロシアは冬の寒さを大量破壊兵器に変えようとしている」として、インフラ施設を破壊したロシアを改めて非難しました。
そして、発電機など冬を乗り越えるための支援を国際社会に訴えています。