「娘の世代にまで核を…」 金総書記の本音?“弱気”も… 韓国・文在寅前大統領が「回顧録」で暴露
今も素顔は謎に包まれている、北朝鮮の金正恩総書記。その金総書記と首脳会談で交わした会話を、韓国の文在寅前大統領が「回顧録」で明らかにしました。
暴露された発言をたどると、金総書記の弱気な一面も見えてきました。
21日、韓国・ソウルの書店に並んでいたのは、発売直後にオンラインで売り上げ1位となった、文在寅(ムンジェイン)前大統領の回顧録です。
そこには…
【文在寅氏 回顧録より】
金正恩(キムジョンウン)氏
「核を使うつもりは全くない」
北朝鮮の金正恩総書記の発言の数々が明らかにされています。
文氏と言えば、南北対話を進め、北朝鮮の金正恩総書記と3回にわたり、首脳会談を行った人物です。
北朝鮮・金正恩委員長(2018年「南北首脳会談」当時)
「こんにちは」
韓国・文在寅大統領(当時)
「ようこそ」
北朝鮮・金正恩委員長(当時)
「お会いできて、うれしいです」
2018年4月の南北首脳会談で2人きりになった時には、こんな発言があったといいます。
【文在寅氏 回顧録より】
金正恩氏(当時)
「私にも娘がいるのに、娘の世代にまで、核を頭にのせて暮らさせたくはない」
当時、北朝鮮が公にしていなかった、娘の存在に言及──。
さらに…
【文在寅氏 回顧録より】
金正恩氏
「核は、徹底的に、自分たちの安全を保障するためだ。使うつもりは全くない」
このように、非核化への思いを吐露したというのです。
回顧録で注目されているのが、金正恩氏の“等身大の姿”。
会談後、共同会見に臨む金総書記について、文氏はこう振り返っています。
【文在寅氏 回顧録より】
文在寅氏
「金氏は、(会見を)一度もやったことがないので、どうやったらよいか、どんな内容を盛り込めば良いかを聞いてきました」
「会見後も、自分がよくやったのかを聞いてきました」
2018年6月当時のアメリカ・トランプ大統領との初の米朝首脳会談では、しっかりと握手し、自信満々に見えますが…この2か月前、文氏には、自身の外交経験の浅さを心配していたといいます。
【文在寅氏 回顧録より】
文在寅氏
「(金氏は)アメリカと初めて首脳会談をするにあたり、何の経験もないことへの心配も話しました。(アメリカへ)どのようにアプローチしたらよいかの質問が多かったです」
こうした、金総書記の“弱気”ともとれる、発言の数々──。
専門家は、演出の可能性もあるとしながら、文氏への“信頼感”のあらわれではないか、と指摘します。
北朝鮮政治が専門 慶応義塾大学 礒﨑敦仁教授
「(金正恩政権は)いわゆる、恐怖政治ですよね。部下たちが具体的に、思い切った進言ができるような状況ではない。(金総書記が)米朝関係のような機微な問題を、相談できるような部下というのはいないわけです。そうすると、対外的に、これまで一貫して対話を訴えてきた文在寅(前)大統領を一定程度、信頼した」
しかし、その文氏も──。
礒﨑敦仁教授
「結局、(文氏は)北朝鮮に大きく譲歩することはなく、アメリカと合同演習も続け、国防予算を増やし続けた。これが、北朝鮮に不信感を生んでしまった結果になるわけですよね」
さらに、金正恩氏が今回の回顧録で、“暴露された”と思い、“不信感”を増す結果になったのでは、と指摘しました。
一方、文氏は回顧録で、安倍元首相にも言及。北朝鮮との軍事的緊張が高まった2017年、「日米韓首脳会談」の場で、安倍元首相が有事に備え、在韓邦人の退避訓練を提案したと主張し…
【文在寅氏 回顧録より】
文在寅氏(安倍元首相について)
「(戦争の)不安をあおる態度でした。緊張緩和のために苦慮する私たちの立場を、全く配慮していませんでした。南北関係が良くなることを日本は望んでいないのかと思うほどでした」
今回の回顧録で、金正恩氏について「非常に礼儀正しかった」などと、好意的に表現した文氏。
“北朝鮮寄り”との指摘が出ていて、韓国の現政権も、金総書記の言葉を全面的に信頼するのは危険と、文氏を批判しています。