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W選惨敗 文大統領「国民の叱責」外交は?

2021年4月8日 15:12

韓国のソウル・釜山市長選挙で与党が敗北したことを受けて、文在寅大統領は「国民の叱責を厳重に受け入れる。より低姿勢で国政に臨む」などとコメントを出しました。文政権の求心力の低下は避けられず、日本との今後の外交にも影響する可能性があります。

●ダブルで与党惨敗
韓国で来年の大統領選挙の前哨戦として位置づけられたソウル市長選挙では、保守系の最大野党「国民の力」の呉世勲候補が57.5%、与党「共に民主党」の朴映宣候補が39.2%の得票率で、野党の呉候補が当選しました。

また、釜山市長選挙でも野党の朴亨ジュン候補が62.7%、与党の金栄春候補が34.4%の得票率で、野党の朴候補が圧勝しました。住宅価格の高騰や住宅公社の職員らによる不正な土地取引の問題が、政権与党への逆風になった形です。

●文大統領、与党の受け止めは
韓国大統領府によると、この選挙結果について8日、文大統領は、「国民の叱責を受け入れる。より低姿勢で、より重い責任感で国政に臨む」との立場を示しました。その上で、不動産問題への対応や経済回復などに邁進すると強調しています。

また、与党「共に民主党」は8日、「国民に大きな失望を与えた」と敗北の責任をとり、党の執行部が全員、辞任すると発表しました。

●韓国メディアの伝え方は
革新系の『ハンギョレ新聞』は、「与党惨敗 恐ろしく背を向けた民心」との見出しで、敗北による政権与党側の衝撃の大きさを伝えています。

一方、保守系の『朝鮮日報』は、「怒った民心 政権を審判」との見出しで、去年の総選挙から1年で民意が完全に覆り、文大統領のレームダック(死に体)化が加速すると伝えています。

●次の大統領選挙への影響は?
この選挙を転換点に、大きな影響が出てくるとみられます。大統領候補として名前があがっていた知日派の李洛淵氏は、今回、与党の選挙対策委員長だったため与党内での立場も苦しくなり、求心力を失う可能性があります。

同じ与党でも文大統領から距離を置く“対日強硬派”の京畿道知事、李在明氏は、今後、さらに支持が強まるとみられます。

一方で、勝利した野党は今回、市民に積極的に支持されたわけでもなく、大統領選では有力な候補者がいません。そこで、第3勢力として前検事総長の尹錫悦氏がどう動くのかが注目されています。今回の選挙で期日前投票を行う際、何らかの立場を表明するとの見方もありましたが、沈黙を保っています。

●今後の政権運営、外交への影響は
今回の敗北によって任期が残り1年あまりとなった文大統領の求心力は、急速に失われることになります。日本との間で懸案になっている、いわゆる元徴用工や慰安婦をめぐる問題では、日本側の求めに応じて譲歩することは支持層のさらなる離反を招くため、難しくなるとみられます。

さらに文大統領は、この夏の東京オリンピックを北朝鮮との対話のきっかけにしたいと考えていたものの、北朝鮮側は不参加を表明。もはやオリンピックのホスト国である日本との関係改善を急ぐ動機もなくなった形で、今後の文政権の外交姿勢は見通せなくなっています。