マリウポリ 製鉄所に迫る食料・物資の危機 ロシア軍が“大規模な攻撃に出る可能性”分析も
ロシアのプーチン大統領が一方的に制圧を宣言したウクライナ南東部マリウポリ。地下に1000人以上の住民が避難しているとされるアゾフスタリ製鉄所では、「食料や物資が底をつくかもしれない」との危機が差し迫っているといいます。一方、ロシア軍が「戦勝記念日までに製鉄所を攻略するため、大規模な攻撃に出る可能性がある」との分析もあります。
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ロイター通信によると、ウクライナ第2の都市・ハルキウでは25日、集合住宅2棟がロシア軍による砲撃を受けたといいます。
砲撃受けた集合住宅の住民は、建物を見上げて「信じられない…最悪だ」とつぶやきました。
建物では消防隊員による消火活動や部屋の捜索が行われていました。現場にはボランティアも入り、足の不自由な住民らを避難させていました。その足の不自由な住民は「(砲撃は)昼も夜もです。最初の頃、夜は静かでしたが、しばらくすると夜も爆発が始まりました」と顔をしかめて訴えました。
別の住民が願ったのは、“平和な空”です。
住民
「何も望まない。ただ、平和な空がほしいだけ!」
一方、西部や中部の鉄道施設に対して25日、同時多発的にロケット弾攻撃が行われました。ロシア国防省が「駅の変電所を破壊した」と発表したのは、ウクライナ西部のリビウ州や中部のビニツァ州など5つの州で6か所です。これらを標的にした理由について、「ドンバス地方のウクライナ軍に外国からの武器が輸送されているため」と主張しています。
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プーチン大統領が一方的に制圧を宣言した南東部マリウポリでは25日、市民ががれきの撤去に追われ、「このゲームのような戦いが終わったら、街を再建しなければなりません」との声も聞かれました。
25日に撮影された映像には、“最後の砦”といわれるアゾフスタリ製鉄所から、黒い煙が上がっている様子が捉えられていました。その地下には、1000人以上の住民が避難しているとされています。
その地下にいるという警察官の音声には、「アゾフスタリ製鉄所内には、実際に多くの民間人がいます。その中には、女性、子供、高齢者や幼児も含まれています。人々は、ここで砲撃から隠れています」との内容が収められていました。
警察官を取材したのは、マリウポリからザポリージャに避難したテレビ局「マリウポリテレビ」です。26日夜、「6時54分にロシアの3発のミサイル(攻撃)に起こされました」と話すマリウポリテレビの社長に取材しました。いま、製鉄所の地下では、ある危機が迫っているといいます。
マリウポリテレビ社長
「(地下の市民は)もう、かなり長い間住んでいます。(十分な)食料と水なしで」
実際に、治安組織「アゾフ連隊」が公開した地下内部とされる映像でも、避難している市民が口にしたのは、食料や物資が底をつくかもしれない不安でした。
避難している市民
「ほとんど食料が残っていない。残りは数日分しかない」
ただ、アメリカの政策研究機関によると、このまま兵糧攻めを続けても、ロシア軍は「5月9日の戦勝記念日までに残りの部隊を餓死させることはできない」と判断している可能性があるということです。つまり、戦勝記念日までに製鉄所を攻略するため、大規模な攻撃に出る可能性があるというのです。
マリウポリテレビの社長は最後に「ロシア軍は街の入り口と出口を封鎖しました。なので、入ることも出ることも、できないです。(マリウポリの)市民の避難は、困難な状況です。人々をマリウポリから救出するために(世界が)団結することが重要です」と訴えました。
(4月26日放送『news zero』より)