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韓国逃走の前科14犯 女性2人殺害も自供

2021年8月31日 19:35

韓国で50代の男が、女性2人の殺害を自供した。男は過去に性犯罪などの前科が多数あり、位置情報を把握される電子足輪の装着を義務づけられていたが、これを切断し逃走していた。逃走の前後に女性2人を殺害したとみられ、電子足輪で行動を監視する制度そのものの有効性が議論となっている。

■電子足輪を切断し逃走 警察に衝撃の告白

31日、ソウル市内で報道陣に囲まれる男。逮捕令状の審査のため訪れた裁判所で突如、報道陣のマイクを蹴り飛ばし、大声で騒ぎ立てた。56歳のこの男は、性犯罪など前科14犯。韓国メディアによると、今年5月、位置情報が把握されるGPS(=衛星利用測位システム)機能がついた電子足輪を装着した上で刑務所から出所したという。

男は27日、この電子足輪を切断し逃走していたが、2日後の29日に、自らソウル市内の警察署を訪れた。男は警察に対し、衝撃的な告白をする。女性2人を殺害したというのだ。警察が供述に基づき、男の自宅と車を調べたところ、それぞれ女性の遺体が発見された。電子足輪を切断する前に知人の女性を殺害し、逃走中にさらに別の女性を殺害したとみられている。

警察や保護観察所は、男が電子足輪を切断したあと、男を捜索したが発見することはできなかった。さらに男が殺害を自供するまでは、2件の殺人事件について把握していなかったのだ。

■電子足輪 再犯防止のため2008年に導入

韓国で対象者の足首に電子足輪を装着し行動を監視する制度は、2008年にスタートした。対象は性犯罪や殺人といった凶悪事件で有罪判決を受け、裁判所が再犯の恐れが高いと認めた人物などで、法務省の管制センターで常に位置情報を把握する。再犯の防止と国民の不安感を解消することが目的だ。

今年7月の時点で、電子足輪の装着を義務づけられている人は8000人以上。韓国法務省は、制度の施行前と比べて性犯罪の再犯率は7分の1に減少していると、その意義を強調している。

一方で、電子足輪を切断する事例も相次いでいる。今年だけで11人が切断、2人はそのまま行方がわからなくなっている。対策として、電子足輪が切断されにくいように、これまで6回改良されたというが、今回の事件が起きてしまった。

■当局は再発防止策発表も 制度に厳しい指摘

男が女性2人の殺害を自供した翌日の30日、韓国法務省は緊急の記者会見を開き、経緯を説明するとともに再発防止策を発表した。電子足輪を切断されないために、さらに強固なものにするほか、監視体制を強化するとしている。さらに違反者に対する処罰の強化も進めるという。

ただ今回の事件を受け、韓国メディアの指摘は厳しい。再発防止策について原則的な対応を繰り返しているだけだとの批判に加え、制度そのものに対する無用論も広がっている。出所後も行動を制限し、夜間は収容施設で寝泊まりするようにするなど、より監視を強化する措置が必要との主張も出ている。

殺害を自供した男は「もっと多くを殺せなかったことを恨む」などと話していて、警察は31日、男を逮捕し詳しい事件の経緯を調べている。