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とけ続けるアルプス氷河…観光地にも影響

2021年11月2日 19:25

世界各地で洪水や山火事など異常気象があいつぐ中、重要となるのは、温暖化対策です。ヨーロッパ、アルプスの氷河はとけ続けていて2100年には消滅する恐れもあると言われています。取材班がみたのは、待ったなしの状況でした。




イタリアとの国境に近いフランス、アルプスのふもとの町。ここには山頂から一直線に連なる氷河としては“世界最大”と言われる、ボソン氷河が広がります。

しかし、取材班がみたのは、温暖化によってとけ続ける氷河です。

宮前明雄記者「こちらは氷河がとけてできた湖なんですが、たまった大量の水がこちらから滝となって凄い勢いで流れ出ています」

アルプスの氷河のふもとに暮らす人々には、思いもよらぬ事態が起きていました。

氷河のふもとの住民「去年は氷河の崩壊が大規模だったので、避難命令が出され道路が通行止めになりました」

緩んだ氷河が崩壊して、家々を直撃する恐れがあるとして、去年、避難命令が出されたのです。

とける氷河。影響は日本人にも馴染みの観光地でも。

登山鉄道に揺られると見えてきたのは、雄大な山々。フランス最大の氷河・メールドグラスです。

山と山の間に挟まれた白の混じった灰色の部分が氷河です。この氷河もまた温暖化で、危機にさらされています。

この観光地最大の目玉が、氷の洞窟です。その中に入ってみると、長い氷の廊下やその奥に広がる氷の部屋が、古くから多くの観光客を魅了します。神秘的な青の世界が広がります。

しかし、ここでも。

宮前明雄記者「洞窟の中は外より涼しくなっているのですが、気温が上がっているため、凄い勢いで氷がとけ始めています」

氷河はとけ続け、10年後には洞窟がなくなる可能性があると言われています。

氷河は実際どれだけとけてきたのか。長年みてきた現地ガイドの津田さんに案内してもらいました。

氷河の歴史が見えるという通路を進んでいくと。

現地ガイド・津田博さん「ここが1985年ね」

記者「どういう意味ですかそれは」

現地ガイド・津田博さん「ここまで氷がありましたってこと」

1985年、今から36年前と比べると、大人の男性である津田さんの頭上の高さまで、氷河があったことになります。

現地ガイド・津田博さん「ちょっとショックな感じはしますよね」

氷河が年々下がっていった記録がしっかりと残されていました。

氷河の1940年代の写真と、2003年の写真を比べてみると、氷河の厚みが確かに減少。氷が減り、山肌が見えているのが分かります。

この一帯は50年で気温が4℃上昇。およそ30年で、氷河の厚さは100メートル減りました。

観光客にも影響が。

以前はロープウエーを降りてから、氷河までは階段でわずか3段。しかし、それが今では、580段以上下がらなければいけません。観光客にも大きな負担を強いるほど、氷河が薄くなったのです。

山肌にも痕跡があります。色が白く変わっている部分は温暖化で氷河が下がっていった跡です。メールドグラスが“地球温暖化の証人”として訴えかけています。

現地ガイド・津田博さん「僕らが最初に見たときとは、見る影もないくらい変わっちゃってますよね」

先週、国連機関は各国が温室効果ガスの削減目標を達成しても、世界の平均気温は今世紀中に少なくとも2.7℃上がると警告。

今回のCOPでは、気温の上昇を1.5℃程度に抑えるために、世界で一致した早急な対策が求められています。

待ったなしの地球温暖化。COPの議長は「温暖化の赤信号が点滅している」と危機感を示しています。