×

オミクロン株の実態“最前線”南ア医師語る

2021年12月5日 20:35
オミクロン株の実態“最前線”南ア医師語る

南アフリカの医療現場で60人以上のオミクロン株感染者を診た南ア医師会・会長のコエツィ医師にバンキシャ!の桝が聞いた。キーパーソンが語ったその特徴と脅威。私たちは何に気をつければ良いのか?1時間以上に及んだインタビューの全文テキスト。(12月3日取材)


■感染力は“高い”…大多数は軽症患者

──これまで何人くらいのオミクロン株の患者を見てきましたか?

(オミクロン株の流行が)始まってから60人以上の患者を診て記録しています。ここ2~3日で患者が増えていますが、症状は軽く入院はしていません。

──デルタ株と比べて症状が違うと感じた点は?

オミクロン株特有の症状としては、主に疲れ、筋肉痛のような体の痛みがあります。頭痛や、ちょっとした喉のかゆみや咳の症状が出ることもあります。熱っぽくなる人もいますが、実際に発熱した患者の診察はしていません。とてもあいまいな症状だといえます。

デルタ株の場合は、味覚や嗅覚の問題や発熱などのはっきりとした症状がありましたが、今回は全く違います。

──これまでと症状が違うから、患者は感染に気付きにくいという傾向はありましたか?

はい。そのために、オミクロン株が確認されたほとんどの国で人々は気付いてもいなかったのだと考えます。みんなデルタ株の重い症状だけに注目しているので、軽度な症状は見逃されやすいです。

もし、ワクチン未接種の人や抵抗力のない人たちに広げてしまうと、入院患者も増えていくと思います。そのようなことは起きてほしくないので、症状は軽いということを理解して、医師に診てもらい検査をして家族とは隔離するようにしてください。

──重症化している人はいますか?

第一次医療機関では、死者や重症患者はまだいません。大多数は軽症患者です。今後、重症化する人が出てくるかもしれません。これから1~2週間で患者の重症度がわかってくるでしょう。

──感染力はデルタ株と比べてどうですか?

毎日患者のデータを見ていると、明らかに感染力は高いと思います。感染者数が急激に増えているので、デルタ株より高い感染力があるといえると思います。


■ワクチン接種済みの方が“症状軽い”

──ワクチン接種の有無で症状に違いは?

若い人やワクチン接種済みの人は症状が軽いこともわかっています。ブレイクスルー感染に関しては年齢にかかわらず全員軽い症状で、再感染した人も軽い症状です。

興味深いことに、ワクチン接種をしている人は、体の痛みや頭痛、疲れが出ますが、接種していない人ほどひどくはありません。断言するにはまだ早いですが、ワクチンが重症化を防いでいるように見受けられます。

──南アフリカ国立感染症研究所によると、感染が広がるハウテン州で、2歳以下の新型コロナ患者が、入院者数の10%を超えたとの報告がありましたが、これもオミクロン株が要因だと考えますか?

入院患者がオミクロン患者なのかどうかはわからないため、病院で検査を受ける必要があります。

これまでで最も幼い患者は生後4か月ですが、家族に感染者が出たため、母親が心配して子どもも検査を受けました。子どもの入院患者が多いかどうかは、全体数を見ないとわかりません。

──南アフリカでは、医療体制の混乱は起きていませんか?

今のところ、医療はひっ迫していません。

検査数は非常に多いので、その分、陽性者数も増えますが、医療機関はひっ迫していません。ただ、このまま進めばひっ迫してくると思います。


■低いワクチン接種率…理由は?

<南アフリカのワクチン接種率は全人口の25%。特に、若い世代の接種率が低い>

──感染急増の理由に低い接種率も考えられますが、どうして低いままなのでしょうか?

60歳以上のワクチン接種率は65%以上です。総合的に見ると低く見えるかもしれませんが、重症化しやすい人たちは多くが接種を受けています。

私は、診療に来る患者一人ひとりにワクチンを接種したか聞いていますが、接種しない理由については、単に面倒くさがっているだけのようです。私に話さないだけかもしれませんが、今のところ反ワクチン論を述べる人はいません。

──日本へのアドバイスは?

日本は接種率が高いと聞いていますが、それは正しいことです。50歳以上の人は3回目の接種を受けるべきです。また、マスクの着用やソーシャルディスタンスなど、基本的な対策が感染者数を減らすと思います。

──現時点では、南アフリカでも日本でも冷静に受け止めて良いと考えますか?

その通りだと思います。注意深くあるべきですが、パニックになるべきではありません。

──南アフリカでの国民の受け止めは?

南アフリカでは政治的な不安定や腐敗といったことに慣れてしまっていて、変異株の出現によって国民が混乱するということはないと思います。国民は問題が起きることに慣れてしまっているのです。


■今後、新たな変異株の影響を防ぐために必要なことは?

<最後に「すべての国がワクチン接種と感染対策をすることで次の変異株は抑えられるか」と問うと、力強く「YES!」と答えた>

──ちょっとでも疑わしいと思ったら検査を受けることが大事?

検査を受けて、本当に軽症であるのか、重症でないのかは確かめるべきです。医師も何をすべきかアドバイスすべきです。軽症のうちに処置できれば重症化するケースはそう多くないはずです。

──オミクロン株の正体がわかるには、あとどれくらいかかりそうですか?

ワクチンの構造はすでに判明していて、感染力が高いこともわかっています。どれだけ重症化するかは、最大で2~3週間のうちにわかると思います。

重症度は集中治療室への入院の事例数に比例します。集中治療室への入院や死亡例が少なく、軽症が多いという場合は、オミクロン株はそこまで危険ではないということがわかります。

──今後、世界的にどうすれば新しい変異株を抑えられるでしょうか?

とにかく多くの人に、特にアフリカにおいて、ワクチン接種を進めていくことだと思います。


写真:桝キャスターとアンジェリック・コエツィ医師
(このインタビューは2021年12月3日に行われました)