ミサイル“81発”…ウクライナ全土を攻撃 原発で一時「放射能事故の恐れ」も
ウクライナ全土で9日早朝、ロシア軍による81発ものミサイル攻撃がありました。ウクライナの全土が標的となり、主にインフラ施設が狙われました。さらに、ウクライナ南部のザポリージャ原発も送電網に被害を受け、外部電源の供給がストップする事態に…。
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ウクライナ東部ハルキウで9日早朝、空に向かって伸びる閃光(せんこう)が撮影されました。ロシア軍が発射した、3発のミサイルによるものです。
ミサイルが着弾した場所の1つが、ウクライナ南部のヘルソンです。
地元住民
「ものすごく揺れたから、(ミサイルが)家の近くで落ちたんだとわかりました」
ウクライナ西部のリビウでも、ミサイルが着弾しました。今回の攻撃で少なくとも6人が亡くなったといいます。
そして、ロシア側が9日、一連のミサイル攻撃について言及しました。
ロシア国防省報道官
「テロ行為に対して、ロシア軍は大規模な報復攻撃を実施した」
ゼレンスキー大統領は、「敵は81発のミサイルを発射し、ウクライナ人を再び威嚇しようとし、哀れな戦術に戻りました。占領者は民間人を恐怖に陥れることしかできない」と非難しました。
攻撃はウクライナの全土が標的となりました。ミサイルが撃たれた時間帯は、人々がまだ眠っていた未明から朝にかけてでした。
キーウの住民
「非常に恐ろしいことです。子どもは怖くなり、ベッドから飛び降りました」
早朝のキーウの街を、黒い煙が覆っていました。
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大規模なミサイル攻撃が行われるのは、2月中旬以来です。その範囲は首都キーウ、西部のリビウ、東部のハルキウ、南部のオデーサなどに及び、合わせて81発のミサイルが使われたということです。
「news zero」は首都キーウに住む日本人男性を取材し、その時の状況を聞きました。
キーウ在住 中村仁さん
「『ドーン』と爆発音でしたので、今まで何度か聞いた音ですので、これはどこか被弾したんだなと。私が住んでいる、割と近くに被弾したんではないかと。警報もなりますし、攻撃も実際あるわけですから、(キーウも)狙われていることは間違いない」
キーウを狙ったミサイルの1つは、火力発電所に着弾したといいます。
キーウ近郊に在住 ドミトロさん
「2本の柱があるところに直撃しました」
「今朝は電気がなく、ネットも使えませんでした」
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今回も、各地で狙われたのがインフラ施設です。ウクライナ南部のザポリージャ原発も標的となりました。ミサイル攻撃で送電網が被害を受け、またしても外部電源の供給がストップしました。ウクライナの原子力企業「エネルゴアトム」とIAEA(=国際原子力機関)は、「期間内に復旧できなければ、全世界に影響する。放射能事故が発生するかもしれない」と非難しました。
先ほど送電網が復旧し、外部電源が回復したといいます。
原発が狙われたことについて専門家は――
防衛省・防衛研究所 現代軍事戦略に詳しい高橋杉雄室長
「ウクライナ国内で電力が復旧してきているという情報がありますから、そのタイミングを狙って送電施設を破壊するという意図だと思います」
原発があるザポリージャ州に住むティーナさん
「恐喝行為だと思います。(ロシア軍は)原発の恐ろしさについて知識はありますか? ちゃんと理解していますか?」
ロシアは、ミサイルが足りていないと言われていました。今回、81発も撃てたことについて専門家は――
ロシア政治に詳しい 慶応義塾大学 廣瀬陽子教授
「決して潤沢にミサイルがあるわけではないんですけど、作ったとたんに(ミサイルを)撃っているという状況。かなりロシア的にも追い詰められていて、合理的な判断が完全にできなくなっている可能性が高い」