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裏に“寝返り”も――トランプ氏、敵陣で圧勝 「黒人と同じ立場」「誇り高き反体制派」…被害者ぶる作戦?【#みんなのギモン】

2024年2月27日 11:05
裏に“寝返り”も――トランプ氏、敵陣で圧勝 「黒人と同じ立場」「誇り高き反体制派」…被害者ぶる作戦?【#みんなのギモン】
アメリカ大統領選に向けた共和党の候補者選びで、トランプ前大統領(77)が対抗馬のヘイリー元国連大使(52)の地元で圧勝。同党の指名はほぼ確実になりましたが、心中は穏やかでないとの見方もあります。勝利の裏側や、本選への懸念に何があるのか―。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「トランプ氏“敵陣”でなぜ圧勝?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●本選に向け被害者ぶる作戦?
●“アキレス腱”も お金かかりすぎ?

■トランプ氏が勝利演説で語ったこと

富田徹・日本テレビ解説委員
「アメリカ大統領選に向けた野党・共和党の候補者選びで、トランプ前大統領が対抗馬のヘイリー元国連大使の地元、サウスカロライナ州で圧勝しました。24日の勝利演説でこう語りました」

トランプ氏
「我々は11月5日もここで立ち上がる。ジョー・バイデンをとらえる。彼はアメリカを破壊している。『おまえはクビだ』と言う」

「共和党の指名がほぼ確実になったトランプ氏。敵はもうバイデン氏ただ1人、というわけなんです」

藤井貴彦アナウンサー
「共和党を支持する方々の民意が、このようにトランプ氏を圧勝に導いているということで、いろんな捉え方をする人がいるトランプ氏のニュースですが、これは事実として受け止めて、この後の様子を見守るというのが正しい姿勢なんじゃないでしょうかね」

■得票率は20ポイントの差…5連勝

富田解説委員
「なぜ敵陣で圧勝できたのか。(アメリカのテレビ局)NBC によると、今回の得票率はトランプ氏が59.8%で、ヘイリー氏(52)の39.5%を大きく引き離して勝利。予備選の5連勝を果たしました」

「アメリカ南部のサウスカロライナ州は、ヘイリー氏がかつて6年間知事を務めた地元でもあります。それでも共和党に保守的な考えを持つ人が増えている中で、ヘイリー氏よりは過激で分かりやすい政策を訴えたトランプ氏に票が流れた形です」

■ヘイリー氏に近い人もトランプ氏支持に

富田解説委員
「さらにトランプ氏は、ある手も打っていました」
「トランプ氏は勝利演説で『大きな要因は、後ろに立っている人たちだ』と持ち上げましたが、共和党唯一の黒人上院議員である地元選出のティム・スコット氏など、もともとヘイリー氏に近い、多くの地元議員がトランプ氏の支持に回りました」

徳島えりかアナウンサー
「ここまで圧勝の流れというのは、予備選前の予想以上かなと思うんですけれども、もともとヘイリー氏に近い人たちさえもトランプ氏支持に回ってしまう理由というのはあるんでしょうか?」

富田解説委員
「(トランプ氏が)勝ちを続ける中で、勝ち馬に乗ろうという流れがどんどん強まってくるということがあります。アメリカメディアによると、スコット議員はトランプ氏が副大統領候補に引き立てるのでは、ともささやかれています」

■「黒人票の獲得」へ…独特の論理

「スコット議員を味方につけるというのはトランプ氏にとって、ヘイリー陣営を切り崩すとともに、もう1つ大きな狙いがありました。それは、黒人票の獲得です。これが今、トランプ氏にとって欲しくてしょうがないものの1つです」

「投票前日、イベントに参加して『自分と黒人は同じ立場だ』などとアピールしました」

「自身が4つの刑事事件で起訴されたことについて、『黒人はこれまで差別されてきた。それが理由で私のことを好きでいてくれる。差別を受けているような視点で私を見ている』と発言しました。独特の論理で共感を得ようとしたわけです」

■ナワリヌイ氏に自分を重ねてアピール

富田解説委員
「さらに、アメリカメディアによると、別の集会では最近獄中で死亡したロシアの反体制派の指導者であるナワリヌイ氏に自分を重ねて『誇り高き反体制派として来た』とアピール。自分も政治的な弾圧の被害者だと主張しています」

伊藤大海アナウンサー
「自分と黒人は同じ立場だ、という発言やナワリヌイ氏を引き合いに出す発言など、ちょっと強引過ぎるんじゃないかなとも思うのですが、狙いはどんなところにあるんでしょうか?」

富田解説委員
「今のままだと共和党の中では無敵であっても、バイデン氏には勝てないかもしれないと思っているからです」

■トランプファン以外を取り込めず

富田解説委員
「AP通信が今回のサウスカロライナ州での予備選で、それぞれの候補に投票した理由を出口調査で聞きました」

「その結果、トランプ氏に投票した人は 10 人のうち 9 人が熱烈な支持者でした。これに対してヘイリー氏に投票した人の場合は、半分はヘイリー氏を支持していますが、もう半分は『トランプ氏が嫌いだから』と答えました」

「つまり、トランプ氏を今連勝させているのはもともとトランプ氏が大好きな人たちで、批判的な人やどちらでもない人という、トランプファン以外の人たちは取り込めていないという情勢が分かっています」

「ただ、大統領選の本選で戦いのカギを握るのは、こうしたどちらでもない無党派層と言われています。そのため、黒人などこれまでトランプ氏の支持層ではなかった人々を味方につける狙いがあったとみられています」

藤井アナウンサー
「選挙というのは1票1票の積み重ねですから、民意を反映するにはやはり選挙に行く、1票を自分の責任で投じることが大切です。アメリカだけではなく日本を含めた全世界、いろんな国の選挙から、1票の大切さを私たちも見ておくべきだと思います」

「今後もトランプ氏の連勝は続いていくんでしょうかね?」

■1年間で75億円超の訴訟費用か

富田解説委員
「まだ本番の本選までの道のりはあるわけですが、ここからは『“アキレス腱”もお金かかりすぎ?』という点について考えます」

「トランプ氏は今回の勝利を受けても、心の中では穏やかじゃないとの見方もあります。トランプ氏は、予備選に勝利した後、23 分間の演説を行いましたが、一言もヘイリー氏に触れませんでした」

「もう眼中にない、ということを強調した形ですが、いらだちを象徴しているともみられています。トランプ氏としては、もうさっさとヘイリー氏に選挙戦から撤退してほしいという思いがあります。しかしヘイリー氏は、資金が続く限り撤退しない構えです」

「するとトランプ氏にとっては、とても困ることがあります。お金がかかることです。大統領選は、気が遠くなるほどお金がかかります。NBCによると前回、2020年の大統領選は全体で66億ドル、当時のレートで計算すると日本円で約7000億円かかりました」

「CMや選挙集会に使うためで、ここにじゃぶじゃぶと資金を投じれば投じるほど、勝利に近づくという傾向もあります。そのため早く共和党内の戦いを終えて、本選にお金を取っておきたいところです」

「これに加えて、トランプ氏は自らが起訴された4つの刑事裁判と自身のビジネスに絡む民事訴訟を抱えています。AP通信は、トランプ陣営の資金管理団体は去年 1年間で訴訟費用として75億円以上を費やしたと報じています」

「こうしたお金が、これから本番に臨むトランプ氏に、ボディブローのように効いてくる可能性があります」

■ヘイリー氏が戦い続けるメリットは?

刈川くるみキャスター
「こうしたお金の問題を抱えながらもトランプ氏が連勝している中で、ヘイリー氏が戦い続けるメリットはあるんですか?」

富田解説委員
「1つは、トランプ氏が刑事裁判などで有罪が相次いで立候補を断念せざるを得ないケースがあるかもしれないということです。もう1つは、さらに4年後の次の大統領選を見据えて、自身が挑戦することを考えて知名度を上げておきたいという狙いもありそうです」

藤井アナウンサー
「トランプ氏でも77歳、バイデン大統領はもっと年上になっているわけですよね。次の大統領候補に名乗りを上げるためにも今の選挙戦を戦い続けることが大切なんだと思います」

「一方でアメリカ国内としては、ウクライナ支援を続けながらバイデン大統領はこの選挙を戦っていくのでしょう。重荷を突きつけられておきながら、自身のこの後の大統領の期間もキープしていかなきゃいけない。大変な状況になりそうですね」

富田解説委員
「このままいくと、本選ではトランプ氏とバイデン氏の対決が現実味を帯びているんですけども、これから9か月、その構図が大きく変わるサプライズがあるのかも注目されます」

(2024年2月26日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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