ウクライナ侵攻から1年半 “ドローン攻防戦”が激化 モスクワへの飛来相次ぎ「迎撃ライフル」も登場
ロシアによるウクライナ侵攻から8月24日で1年半となります。戦闘が長期化するなか、無人機による攻防が激しさを増しています。
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ロシア・モスクワの中心部。警察官が背中に長い筒を背負っていました。銃のような装備品に見えますが、実は実弾入りの銃ではなく無人機を操縦不能にする「ドローン迎撃ライフル」だといいます。モスクワに相次いで飛来するウクライナの無人機への対策として、警察に新たに導入されたのです。
「ドローン迎撃ライフル」はどのように使うのか。製造するロシア企業が電話取材に応じました。
――どうやって無人機を落とすのか?
迎撃ライフル メーカー担当者
「簡単に言えば電波妨害です。操縦用の通信や撮影動画の伝送をブロックします」
メーカーのPR映像は、朝起きて、女性がカーテンを開けると、目の前に無人機。女性が悲鳴を上げると、庭の手入れをしていた夫がすぐに迎撃ライフルのトリガーを引き、妨害電波を照射。無人機を操縦不能にして着陸させるという内容です。
このメーカーの銃は実際にロシア軍が戦場で使っているといいます。
ロシアが警戒を強める背景にあるのは、ウクライナによる無人機攻撃の激化です。7月末からモスクワなどロシア本土への攻撃が急増し、直近では6日連続でモスクワに飛来しています。
モスクワの人
「爆発音で心配になりました。モスクワを離れた方がいいかもしれない。早く終わってほしい」
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ウクライナは「ドローン軍」を創設し、民間からの寄付も募って無人機の増強を図ってきました。6月に始まった反転攻勢が思うように進まないなか、フェドロフ副首相は、大量の無人機をバックに「兵士は無人機で装甲車や戦車を破壊することができる」と話す動画をSNSに公開しました。
また、国産無人機の開発にも力を入れ新型の「ボベール」を製造。最大航続距離は1000キロで、モスクワへの攻撃にも使われたと指摘されています。
さらに海でも「水上ドローン」によりロシアの軍艦などを攻撃しています。
一方、ロシアもミサイルに変わる攻撃手段として無人機を多用しています。背景について専門家は次のように話しています。
ロシア政治に詳しい慶応義塾大学・廣瀬陽子教授
「ウクライナは色々な(攻撃)手段を持っているんだと、ロシア側に示すこともできるし、ロシア国民に実際にはロシアは『特別軍事作戦』ではなくて、本当に戦争しているんだというような恐怖心を植えつける効果も持っている。ミサイルの10分の1の費用でつくれ、ドローンが前より10倍(の数を)つくれるというとなると、重要な戦力になっている」
無人機をめぐっては7月30日、ウクライナ軍が意味深な動画を公開しています。
ウクライナの少年が、家族の姿を描いた紙で作った紙飛行機を焼け跡から飛ばすと、それはいつしか無人機に変わり、編隊となってロシア各地を襲い、首都モスクワへ。燃えさかるクレムリンのシルエットに「8月24日」という言葉が浮かび上がるという内容です。
侵攻開始から1年半、そしてクライナの独立記念日でもある8月24日、モスクワ周辺には3機の無人機が飛来。ロシア側は撃墜したと発表しています。