“恐怖”で異論封じるプーチン政権 「報道の自由」締め付け強化 命の危険も…
ロシアで大統領選挙の投票がはじまりました。プーチン大統領の5回目の当選が確実視される中、異論を許さない独裁体制にあらがおうとする人々を取材しました。
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15日、ロシア大統領選挙の投票がはじまりました。
記者(ロシア・モスクワ、日本時間15日午後2時すぎ)
「モスクワの投票所でも午前8時から投票がはじまりました。出勤前の人たちが投票に訪れています」
プーチン大統領の圧勝が確実視される中、政権に声をあげることはますます難しくなっています。
反プーチンのカリスマ、ナワリヌイ氏が2月に急死しましたが、その死にはプーチン政権の関与もささやかれています。1日に行われた葬儀に参列していた、日本語通訳をしているという女性が話してくれたのは、親しい人以外とは自由な会話もできない現状です。
葬儀に参列した女性(5日)
「相手の反応が(どうなるか)わからないし、最悪の場合は警察に通報するとか、そういう人もいる」
イギリスBBCによると、ウクライナ侵攻の開始以来、ロシア軍を批判した人を警察に密告する動きが相次いでいるといいます。
密告されるという恐怖で異論を封じようとするプーチン政権。大統領選での圧勝を確実にするため「報道の自由」への締め付けも強めています。
ドイツでロシアの独立系メディアの記者として働くエレーナさんは、侵攻直後にロシアからウクライナ南部ヘルソンに入り、ロシア兵による市民の誘拐や拷問の実態を暴きました。すると、同僚から警告を受けたといいます。
ロシア独立系メディア記者 エレーナさん
「現地のロシア兵に私を殺すよう命令が出ていると(同僚から)聞きました」
エレーナさんは命の危険から帰国を断念し、ドイツに移りました。しかし、暮らしはじめて3週間後のある日…
ロシア独立系メディア記者 エレーナさん
「『あなたすごく変なにおいがする』と(友人に)言われたんです。腐った果物みたいなにおいでした」
頭痛や嘔吐(おうと)など不可解な体調不良に襲われ、医師から毒を盛られた可能性を指摘されたのです。
ロシア独立系メディア記者 エレーナさん
「ロシアではジャーナリズムが『犯罪』になりました。状況は悪化し続けています」
徹底的な締め付けで経験豊富なジャーナリストが次々と去っていくロシア。人材不足に直面する国内の報道の現場には、10代の若者が立ちはじめています。
独立系メディア記者 アンナ・スリーバさん(19)
「こんにちは。アンナです、19歳です」
アンナ・スリーバさんは、人権問題などに力を入れる独立系メディアで2月に記者として働きはじめたばかりです。しかし、すでに当局による取材妨害を経験していました。
2月24日にアンナさんが撮影した映像には、アンナさんの同僚が連行される姿がとらえられていました。ウクライナで戦う動員兵の妻らの集会を取材中でした。
アンナ・スリーバさん(2月24日アンナさん撮影)
「どうして彼をつかまえるの? 拘束しないで!」
警察官
「あんたも捕まえるぞ」
この後、アンナさん自身も一時拘束されました。
独立系メディア記者 アンナ・スリーバさん(ロシア・モスクワ、6日)
「2晩拘束されました。政権が嫌がる取材だったからです」
覚悟はしていた「プーチンのロシア」で記者をすることの危険性。記者をやめることも頭をよぎると言いますが…
独立系メディア記者 アンナ・スリーバさん
「私にとって重要なのは、自分が正しいと思う行動をすることです。私が生まれたこの国が混乱を引き起こしています。そして(ウクライナなどで)人々を殺しています。この状況を止めるため、何らかの貢献を続けたいです」
ロシアで進む社会統制。選挙を経て、さらに強まるとみられます。