米大統領選争点「エネルギー政策」 激戦州で意見対立、背景は…
アメリカ大統領選挙まであと10日。大きな争点の一つが、気候変動やインフレとも関連するエネルギー政策です。激戦州の一つ、ラストベルトを抱える東部ペンシルベニア州では、地域再生のカギとなった化石燃料とクリーンエネルギーで意見が対立しています。
アメリカ東部ペンシルベニア州。のどかな風景が広がる道の脇には天然ガスのパイプラインがあることを示す標識が。
ここペンシルベニア州は、テキサス州に次ぐ、全米2位の天然ガスの産地です。長年、農場を営んできたジョージさん。その農場の中に、天然ガスをくみ上げる施設があるといいます。
ジョージさん「羊が500匹以上いるよ」
羊が草をはむ丘の先に見えてきたのが…。
記者「広大な敷地の牧場内ですが、あちらを見てください。山を切り開いてシェールガスの採掘が行われています」
ジョージさん「この施設は3年前に建設されました。(建設前)ここには丘の上に木が生えているだけでした」
農場の地下一帯には、シェール層と呼ばれる岩盤が広がっています。ここに化学物質を含む圧力の高い水を注入して、岩盤の割れ目から、天然ガス(=シェールガス)を抽出しています。
ジョージさんは石油開発会社に土地を貸して報酬を受け取り、農場に必要な機器の購入に充てています。
ジョージさん「経済的には支払いが、だいぶ楽になりました。欲しい機材を買う機会を得たのです。トランプを支持します」
インフレなどの景気対策として、化石燃料の増産を掲げるトランプ氏。
共和党・トランプ前大統領「石油を掘って掘りまくれ! そうすることで物価を大幅に下げることができるんだ」
製造業と経済が衰退した「ラストベルト」の一角、ペンシルベニアにとって、シェールガスの掘削を進めることは、地域の雇用にも良い影響があると、石油業界団体のトップは話します。
ペンシルベニア独立石油・ガス協会、ダン・ウィーバー会長「州内のシェールガス産業だけで、30万人以上を雇用しています。高校を卒業したばかりでも、努力と時間を惜しまなければ、高い収入を得られます」
一方、民主党の大統領候補ハリス氏は、気候変動対策を推進し、ABCニュースの大統領候補者討論会で「クリーンエネルギー」への投資を強調しました。
民主党・ハリス副大統領「私は副大統領として、過去4年間でクリーンエネルギーに1兆ドルを投資したことを誇りに思っています」「私たちはタートル・クリークの電池工場で650人を含む、約74万人の雇用を創出しました」
ペンシルベニア州タートル・クリークでは、政府の融資により2年前に、次世代の電池といわれる亜鉛電池工場が増設されました。
地元の市長は雇用の創出を歓迎するとともに、クリーンエネルギーに戦争を仕掛けたのはトランプ氏だと主張しています。
ハリス氏の支持者「気候変動対策の促進など、私たち人類を前進させる政策を支持します」
投票先は未定の人「持続可能な経済、エネルギーに転換する必要があります。もう、気候や災害の危険度は上昇しています」
最新のペンシルベニア州での世論調査では、両者の支持率の差は、わずか0.6ポイント(トランプ氏・48.3%、ハリス氏・47.7%)。投票まで、あと10日と迫る中、両陣営の最後の追い込みが続きます。